日本が乗り越えなければならない壁

 Omdiaの調査によれば、2025年のヒューマノイドロボット出荷台数で、中国企業は市場の87%を占めた。上海のAgiBot社が5168台で世界首位、杭州のUnitree社が4200台で2位。対してTeslaは150台、Figure AIも150台にとどまった。

 中国には150社以上のヒューマノイドロボットメーカーが存在し、価格競争力も圧倒的だ。Unitreeのエントリーモデルは約6000ドル(約95万円)、AgiBotの小型モデルは約1万4000ドル(約222万円)。Teslaが目標とする2万〜3万ドルを大きく下回る。米国が技術を磨いている間に、中国は製造力で市場を押さえにかかっていると言えるだろう。

 もちろん、日本企業も動き始めている。トヨタはNVIDIAのOmniverseを活用し、工場でのロボット動作をシミュレーションで最適化している。トヨタリサーチインスティテュート(TRI)は、生活支援ロボットや行動モデルの研究を進める

 日本発のAIユニコーン企業Preferred Networks(PFN)は、ファナックと協業して製造現場へのAI適用を推進している。しかし、米中が国家レベルで繰り広げる投資競争と比較すると、残念ながら規模の差は歴然としている。

 日本がフィジカルAI時代にスムーズに移行するには、いくつかの構造的な課題を直視する必要がある。これらは個別の技術力というより、企業文化や産業エコシステムに根ざした問題と言えるだろう。

 第1に、AI人材の不足がある。

 サンフランシスコ・ベイエリアだけで2025年のAI投資額は1220億ドルに達し、トップ研究者には数千万ドル規模の報酬が提示される。OpenAIやAnthropicは世界中から才能を吸い寄せている。

 日本企業がこの人材獲得競争で対等に戦うことは極めて難しい。日本国内のAI人材は慢性的に不足しており、2024年時点で外国人のIT専門家は8.5万人だ。日本人技術者も増加傾向にあるとはいえ、米国との差は大きい。