供給過剰懸念でもOPECプラスは増産

 OPECプラスは増産の理由に世界の原油在庫の少なさを挙げているが、その主張の正当性に疑問が呈されている。エネルギー調査企業「カイロス」は6月3日「世界の原油在庫は過去100日間で約1億7000万バレル増加した。中国の在庫増加が主な要因であり、世界的にも供給過剰の兆候が強まっている」との分析結果を示した。

 にもかかわらず、OPECプラスは増産を続けるようだ。ブルームバーグは6月4日「OPECプラスは8月も日量41万バレル増産し、9月も増産を行う可能性がある」と報じた。

 今週の原油市場が注目したのはカナダの山火事だった。

 アルバータ州で発生した山火事により、カナダの原油生産量の約7%に当たる日量34万4000バレル超のオイルサンドの生産が打撃を受けている。

カナダ・アルバータ州での山火事(提供:Alberta Wildfire/ロイター/アフロ)

 カナダは今や世界第4位の産油国だ。アルバータ州と西海岸を結ぶパイプラインの輸送能力が昨年5月に日量89万バレルに拡張されて米国以外への輸出が増加しており、世界の原油市場への影響力が高まっている。

 中東や米国産に比べて価格が安いため、中国はカナダ産原油の購入に積極的であり、韓国も輸入を本格化させようとしている。日本は現時点で輸入していないが、中東依存度を下げる観点からカナダ産原油の輸入を検討すべきだろう。

 原油供給に支障をきたす恐れがある地政学リスクも原油価格を下支えしている。