
ドイツがメルツ首相の下、「強いドイツ」実現に向けて動き出している。軍備増強などが柱だが、肝心の経済は振るわない。足元では企業の倒産件数が急増し、信用力の低い企業向け融資への警戒感が強まっており、ドイツが次の金融危機の震源地になるのではとの不安も頭をよぎる。
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
5月6日にドイツ首相に就任したメルツ氏が「強いドイツ」の実現に向けた動きを加速させている。トランプ米大統領が欧州軽視の姿勢を強めていることが背景にある。
メルツ氏は首相就任前の3月、ウクライナ支援や軍備増強を可能にするため、財政規律を緩和する基本法(憲法)の改正を主導し、就任直後にドイツ軍をリトアニアに常駐させることを決定した。ドイツ軍単独の海外常駐は第2次世界大戦後初めてのことだ。
メルツ氏の活躍にトランプ氏も満足している。6月5日にワシントンのホワイトハウスでメルツ氏と初めて会談した際、国防費増額に動くドイツの姿勢を評価し、米軍のドイツ駐留を維持すると表明した。
ショルツ前政権下で存在感を低下させたドイツだが、国際社会はメルツ氏が再び欧州で主導的な役割を果たすのではないかと期待を寄せている。
だが、富国強兵という用語が示すとおり、強いドイツを実現するためには経済が好調であることが絶対条件だ。
ドイツ経済は2年続けてマイナス成長となり、今年も芳しくない状況が続いている。