イランの報復攻撃を迎撃するイスラエル。写真はイスラエルのテルアビブ=13日(写真:AP/アフロ)

イスラエルとイランが事実上の交戦状態に入り、中東情勢が緊迫している。米WTI原油先物価格(原油価格)は13日、一時1バレル=77.62ドルと5カ月ぶりの高値をつけ、原油輸送の要所であるホルムズ海峡が封鎖されることへの懸念から100ドルを超えるとの見通しもある。一方、需給の状況から年末には50ドル割れとの見方も。地政学リスクと需給状況を整理する。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格(原油価格)は13日、1バレル=72.98ドルで取引を終了した。一時は77.62ドルと1月以来約5カ月ぶりの高値を付けた。中東情勢の緊迫化を受け、同地域からの原油供給に影響が出るとの懸念が広がったことが主な理由だ。

  イスラエル軍は13日「イラン各地の核施設や軍事施設など100カ所以上の標的を攻撃した」と発表した。これに対し、イラン側もイスラエルに向けて数百発の各種弾道ミサイルを発射したことを明らかにした。

 イスラエルとイランは昨年、2回にわたって軍事衝突しているが、今回はそれをはるかに上回る規模となることは間違いない。このため、市場からは「今後も攻撃が続けば、同地域の石油関連施設が被害を受けたり、イランがホルムズ海峡を封鎖したりする可能性がある」との声が聞こえてくる。

 日量約2000万バレルの原油がホルムズ海峡を通過していることから、同海峡が封鎖されれば、原油価格は1バレル=100ドルを超える可能性があるとゴールドマン・サックスは分析している。

 だが、「この可能性はほとんどないのではないか」と筆者は考えている。原油を輸出するためには、イランにとってもホルムズ海峡での安全な航行は欠かせないからだ。