
ロシア自慢の「高性能地対空ミサイル」を秒殺
6月13日から12日間に及んだイスラエルとイランの交戦は、21日にアメリカが実施したイラン核施設へのピンポイント爆撃「ミッドナイト・ハンマー(真夜中の鉄槌)」により停戦合意へと進展した。
イランは瞬時に対抗手段の大半を失い、首都テヘラン上空の制空権(航空優勢)を奪われ、アメリカのB-2ステルス爆撃機による核施設攻撃も許してしまった。こうなると最高指導者のハメネイ師は一時停戦をのまざるを得ず、イスラエルのネタニヤフ首相もそれに同調した形だ。
「外国の戦争に関わらない」がモットーのトランプ米大統領の“フェイント戦法”は効果があったようで、今のところ停戦は辛うじて守られている(7月2日現在)。
事の発端となったイスラエルの先制攻撃「ライジング・ライオン作戦」(6月13日)もアメリカが協力した可能性があり、事実上アメリカ主導の1つの空爆作戦と見ていいだろう。その衝撃度は、標的となったイランはもちろん、ロシア、中国、北朝鮮という“反米三国連合”も青ざめるほど強烈だったに違いない。
まずロシアは、イランに供与した自慢の高性能防空システムが秒殺された。射程200~250km(長距離バージョン)の長いリーチが特徴のS-300超長距離地対空ミサイルと、これを管制する防空レーダー・システムを主軸としたシステムで、さらに別のロシア、中国、北朝鮮各国製や、イラン国産の多種多様な地対空ミサイル(ほぼ全部が旧ソ連製をベースに開発)、駐機中の戦闘機の多くも破壊された。

イスラエルは攻撃開始後48時間以内に、テヘランを含むイラン西半分の広大な空域をほぼ制圧。約200機の軍用機を動員し、秒単位で作戦を進行する緻密さを見せた。
一連の制空権奪取作戦は、軍事用語でSAED/DEAD(敵防空網制圧/敵防空網破壊)と呼ばれる。ステルス機を前面に、IT・AI、電子妨害、情報共有をフル活用し、敵の地対空ミサイル基地や防空レーダー、戦闘機を排除。さらなる地上攻撃のため制空権を握るのが目的だ。
今回イスラエルはかなり前から周到に準備し、スパイ組織のモサド(諜報特務庁)やアマン(軍情報部諜報局)の工作員を多数イランに潜入させていたと見られる。工作員はレーダー基地や地対空ミサイル施設の多くを自爆ドローンで破壊し、味方の戦闘機が侵攻しやすいように露払いを演じた。
並行してレーダーに映りにくいF-35ステルス戦闘機が先陣を切り、卓越した電子妨害(ジャミング:妨害電波のようなもの)を行いながら、空対地ミサイルや精密誘導爆弾で、イランのレーダー基地や地対空ミサイル施設、通信施設を空爆した。


制空権の掌握後は、ステルス性能はないが爆弾搭載量で勝るF-15、F-16両戦闘機が出陣。弾道ミサイル発射施設やドローン設備、空軍基地・空港、他の軍事施設を撃破した。同時にハメネイ政権の要人も次々に殺害する斬首作戦にも参加した模様だ。
