2025年末の日経平均は5万円を超えた(2025年12月30日撮影、写真:つのだよしお/アフロ)
(英フィナンシャル・タイムズ電子版 2026年1月1日付)
バブル気味に膨らんでいる人工知能(AI)への期待感や半導体の魅力、防衛産業の魅惑など忘れていい。
昨年の日本株式市場で最も示唆に富む動きが見られたのは、スーパーマーケットチェーンの売り場の通路だった。
イオンの株価が2025年に101%上昇したことで、日本の「ゴルディロックス危機」と呼べるものが浮き彫りになった。
この国の経済、人口動態、政治の危機を取り巻く環境が、慢心が一切許されないほど冷たいわけではなく、急進的な改革を余儀なくされるほど熱いわけでもない、しかしのるかそるかの分岐点が近いという恐怖心をかき立てるにはちょうどよい温度になっている状況のことだ。
この危機は2026年にヤマ場を迎える可能性が十分にある。
イオン株の人気の秘密
イオンの株価パフォーマンスは、表面的には理にかなっていた。2025年8月中間期は営業利益が過去最高を更新し、低価格帯商品が拡充された。
だが、このような従来型の企業(イオンは物理的な店舗を展開する小売チェーンの大手で、店舗数は日本最大級)が、投資家からこのように大量の支持を集中的に得ることは珍しい。
急上昇に沸いた2025年の東京株式市場にあっても、だ。
だが、イオン株には大きな株価押し上げ要因が別にあったと証券関係者は指摘する。
物価高、不十分な賃金上昇、そして特に食料品価格の上昇スピードに苦労しているこの国の個人投資家に刺さる魅力をタイミングよく提供していたことも寄与した、というのだ。
日本企業は何十年も前からいわゆる「株主優待」を提供している。
個人投資家への贈り物のことで、その種類は食品や家庭用品からプロ向けの高度な気象情報、テーマパークの入場券に至るまで様々だ。
これらの費用効果性を注意深く比較検討している多くのサイトによれば、イオンの株主優待のお得さはトップクラスだ。
最低売買単位に当たる100株(直近の株価で言えばおよそ1600米ドル)以上保有する株主は様々な特典を受けることができ、そのなかにはイオンの店舗で買い物をすると気前のよいキャッシュバックが受けられるというものもある。
株価収益率(PER)が恐ろしく高いイオン株を個人投資家が猛烈に買い進んだのは、食費をほんのわずかでも切り詰められるのならできることは何でもやるという中間層が日本に大勢いることの現れだ。
恐らく家計のやりくりにある程度苦労しているが、優待を受けるのに必要な量のイオン株を買う資金は工面できる世帯だ。