ゴミ箱などを持ち寄り交差点に仮設のラウンドアバウトを作ってICEの車のナンバーを確認しているICEに反発する住民(2月7日ミネアポリスで、写真:ロイター/アフロ)
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(英フィナンシャル・タイムズ紙 2026年2月2日付)

 猫の目のように変わる関税政策から金利の政治化、自分に逆らう人物への個人攻撃に至るまで、ドナルド・トランプは米国の企業経営者にあらゆる種類の問題をもたらしている。

 しかし、当の経営者はなかなか声を上げない。

 その理由は多岐にわたり、減税と規制緩和はカオスに耐えるだけの価値があるという日和見的な考え、自分たちなら大統領を制御できるという勘違い、トランプの個人攻撃の標的になりたくないという至極もっともな恐怖心など様々だ。

 だが、ミネソタ州ミネアポリスでの惨事がそうした計算を変えつつある。

 同市での不法移民の取り締まりに抗議していた看護師アレックス・プレッティを米移民・税関捜査局(ICE)の捜査員が射殺した翌日、ミネソタ州を本拠地とする大企業60社――小売のターゲット、家電量販店のベストバイ、工業製品・事務用品のスリーエム(3M)、食品のゼネラル・ミルズ、医療保険のユナイテッドヘルス・グループ、金融のUSバンコープ、穀物商社のカーギルなど――が、同州における「緊張の即時緩和」を求める公開書簡を送った。

 その数時間後には経営者団体「ビジネス・ラウンドテーブル」代表のジョシュア・ボルテンが書簡への支持を表明した。

ミネアポリスでの惨事が転換点になるか?

 それとほぼ同じ頃、テクノロジー会社の経営幹部や投資家数百人が反ICE運動の狼煙を上げた。

「私たちは皆、ミネアポリス市街でICEが1人の市民を残忍に殺害する様子を目撃した」

 そう記されたソーシャルメディアへの投稿にはグーグル、アマゾン・ドット・コム、セールスフォース、ウーバーに籍を置く専門職の社員らの署名が添えられていた。

「昨年10月にトランプがサンフランシスコに州兵を派遣すると脅してきた時には、テック業界の指導者たちがホワイトハウスに電話を入れた。これが奏功し、トランプは計画を撤回した。我々は今日、我々のCEO(最高経営責任者)に対し、会社がICEと結んでいる契約をすべて解除し、ICEの暴力に公の場で抗議するよう求める」

 あいにく、彼らが抗議の声を上げ始める直前に、シリコンバレー企業のCEO数人はアマゾンが制作したファーストレディーのドキュメンタリー映画『メラニア』の試写会に参加すべくワシントンにいた。

 米国の政治経済に対する信頼を現在進行形で損なっている大統領にあまりにも多くの米国企業経営者がゴマをすっていることを気づかせてくれる、不愉快な出来事だった。

 ここで浮上するのが、ミネアポリスが転換点になるのか、これをきっかけにトランプ政権がもたらすダメージについて声を上げる経営者がついに増えるのか、という問題だ。

 これは転換点となるべき局面であり、道徳的な理由もさることながら、自己利益の観点から見てもそうなるべきだ。