強さの源泉である労働力を減らす愚
まず、移民の問題それ自体から見ていこう。
米国勢調査局がまとめた新しいデータによれば、2024年7月からの1年間で米国の人口は0.5%しか増えなかった。
移民の純流入数が270万人から130万人に減ったことが主な要因だ。同局では、今年の純流入数が32万1000人に落ち込みそうだと予想している。
トランプの大統領次席補佐官(国土安全保障担当)を務めるスティーブン・ミラーのような排外主義者なら、喜ばしいことだと思うかもしれない。だが、それは違う。
国内総生産(GDP)は人口と生産性だけで決まる。労働力を減らせば、インフレにとっての追い風と経済成長にとっての潜在的な向かい風の両方が生み出される。
ドイツのベレンベルク銀行の米国担当エコノミスト、アタカン・バキスカンは最近の投資家向けリポートで次のように指摘した。
「1918年のスペイン風邪、第2次世界大戦、そして新型コロナウイルスのパンデミック以降で初めて、米国に居住する生産年齢人口が前年比で減少する可能性がある。2025年と2026年には移民の純流入数がゼロに近いかマイナスになることから、米国では2025年の第2・第3四半期の実績に近いGDPの伸びは考えにくい」
米国経済にとって最も重要な強みの一つを、なぜ大統領はあれほど積極的に捨てようとしているのか。米国のCEOたちはホワイトハウスに毎日電話をかけて問いただすべきだろう。
消費者も恐怖を覚える環境
また、移民のみならず消費者までもが恐怖を覚える環境をトランプが生み出していることについても不満を申し立てるべきだ。
株式市場は記録的な高値にあるかもしれないが、金(ゴールド)も史上最高値圏にあり、これは人々が将来のことを強く心配していることを物語る。
消費者信頼感は12年ぶりの低水準に落ち込んでいる。
人々はパンデミックの最中よりも悲観的になっており、支出にブレーキをかける公算が大きい。小売業からは、これについて怒りを露わにするCEOがもっと出てくるべきだ。
エネルギーや食品の価格を下げるために何かやっているのか、気が進まない石油会社の幹部たちにベネズエラへの投資を無理強いしようとしたり、関税を負担させられた農家に農産物の価格を引き下げるよう命じたりしている以外に何をしているのかと大統領に問うべきだ。
米国の実業界のエリートは、将来の国際貿易や投資の流れにおける深刻な変化を大統領の行動が誘発していることについても大いに心配すべきだ。
欧州連合(EU)はつい先日、中南米諸国と大型の貿易協定を締結した。インドとの結びつきも強化している。
また英国やカナダなど比較的小さな国々は、米国はあまり当てにならないと考え、商取引をしようと中国に声をかけている。