TSMCの子会社JASMの熊本工場(2024年4月14日、写真:松尾/アフロ)
(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)
3nmを作ることになったTSMC熊本第2工場
もし日本に最先端の半導体工場が建てば、産業は復活する──。そんな物語を、私たちは心のどこかで信じている。
巨額の補助金を投じ、世界最先端の製造装置を並べ、最も微細なトランジスタを量産する。その光景は、確かに国家プロジェクトにふさわしく、長らく「失われた」と言われてきた日本の半導体産業復活の象徴にも見える。
しかし、ここで一つだけ、極めて不都合な問いを立てたい。
その半導体工場は、本当に儲かるのか?
さらに言えば、日本に建設されるその最先端工場は、本当に日本の手の中にあると言えるのだろうか。
2026年2月5日、台湾TSMCをはじめソニー、デンソー、トヨタ自動車などが出資するJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)の熊本第2工場(Phase2、以下「P2」)が、7nmでも4nmでもなく、3nmを生産する方向で決まったと報じられた(日本経済新聞、2026年2月5日)。
このニュースは、日本の半導体復活を象徴する出来事として歓迎されているようだ。しかし、この決定の本質を理解している人は驚くほど少ない。
結論を先に言おう。チップをウエハ上に作り込む前工程だけを見れば、3nm(N3)は驚異的な収益力を持つ。しかし、その利益を最終的に決めるのはJASM P2ではない。JASMの親会社であるTSMCだ。
本稿では、この一見矛盾した構造を、採算モデルに基づいて読み解いていく。その先に浮かび上がるのは、日本の半導体政策の核心に潜む重大なリスクである。