EVバスの合弁生産を発表した三菱ふそうバストラックのカール・デッペンCEO(左)と鴻海のEV事業最高戦略責任者の関潤氏(右)(写真:井上久男)
(井上 久男:ジャーナリスト)
台湾の鴻海精密工業と、三菱ふそうトラック・バス(MFTBC)は、50%ずつ出資して合弁で新バス会社(本社・川崎市)を今年後半に設立する。1月22日、MFTBCのカール・デッペンCEOと、鴻海でEV事業最高戦略責任者を務める関潤氏が記者会見して発表した。
MFTBCは現在、富山県内にある製造子会社でバスを製造しているが、同子会社が持つ機能は新会社に移管される。また、MFTBC内にあるバス事業に関する開発、営業、購買などの機能も新会社に移される。
新会社では、MFTBCのディーゼルエンジンのバスの製造を続けると同時に、鴻海が開発したEVバスを製造してFUSOブランドで販売する。鴻海の自社ブランドではEVバスを販売しない。この点について、関氏は「我々は、顧客がチャンピオンになる黒子の天才だ」と説明した。黒子としての鴻海の強みは開発スピードの早さとコスト力だ。
両社の提携は、日本の製造業が、日本と友好的な外資を活用しながら国内に生産拠点を残し、雇用も維持していくための新たなビジネスモデルの一つになるかもしれない。
新会社設立の狙いは?
中長期的にはEVの需要は復活すると見られるが、短期的な視点で見るとEVで収益を出すことは厳しい。これは多くの伝統的自動車メーカーにとって同じことが言えるだろう。将来に備えてEV事業をある程度推進しながら大損しない、すなわちリスクを低減するためには、「黒子」を活用する発想も必要ではないだろうか。
その意味するところは、自社ブランドの基幹に据える製品は自社で開発しつつも、収益性が低い領域のEVは他社を活用する視点がないと、やればやるほど赤字にはまるリスクがあるということだ。
今回の新会社設立の狙いは、大きく2つある。
まずMFTBCにとって自社で大きな開発投資をかけずにEVバスという新製品を得られることだ。商用車の世界も、自動運転や電動化などに関して大きな投資が必要になっている。MFTBCにとってバス事業はコアではないが、交通インフラを供給するという社会的責任上、単純には撤退はできない。
続いて鴻海にとっては新規事業の柱の一つであるEV事業の国際化を推進できることだ。鴻海は、台湾、日本、米国の各市場でのEV事業強化を狙っており、日本での生産拠点の確保を求めていた。