退任するトヨタ自動車の佐藤恒治社長(左)と、新たに社長に就任する近健太執行役員・最高財務責任者(CFO)(写真:つのだよしお/アフロ)
(井上 久男:ジャーナリスト)
トヨタ自動車は2月6日、佐藤恒治社長が記者会見し、自らが退任する社長交代人事を発表した。4月1日付で、後任には近健太執行役員・最高財務責任者(CFO)が昇格する。佐藤氏は副会長に就き、新設するChief Industry Officer(CIO=最高産業責任者)となる。
記者会見で佐藤氏は「まだ3年だけど、もう3年」と述べた。この発言が意味するところは、上場企業の社長の在任期間として3年は短い方だが、時代の流れが速い現代社会において3年経てば、状況も変化するので、後継者にバトンを託すということだろう。
佐藤氏は2023年4月に、豊田章男現会長の後任社長に就いた。14年間社長を務めた豊田氏が主導した「もっといいクルマづくり」戦略のフィナーレが佐藤氏に託された。その役目を終えたことで、トヨタの次のステージを近氏に託したということだろう。
トヨタが意識する2つの次のステージ
トヨタが次のステージで意識していることは、①日本の産業界全体の競争力を高めること、②トヨタが次世代においても競争力を持つために稼ぐ力をさらに強化していく、ということだ。今回のトヨタ社長交代をこの2つの視点で分析する。
まずは、日本の産業界全体の競争力を高めることについて。佐藤氏は記者会見で今年1月末に「日本をもっとよくすること」について豊田氏と話し合ったという。佐藤氏は現在、日本経団連副会長と日本自動車工業会の会長も務めている。CIOに就くことで、仕事の軸足をトヨタという一企業のトップから産業界全体を見据えた仕事に移す。
具体的には、日本の自動車産業の競争力が、台頭する中国の自動車産業に負けないようにするために、日本のオール自動車産業で協調し合えることを増やしていくために汗を流すということだろう。
この点について佐藤氏は「トヨタと他社でつばぜり合いをして違うことをやっている場合ではない」などと述べた。これは、AIとの融合による無人運転などの新しい技術が台頭している中、新しい技術の社会実装のために日本の自動車産業が全社一丸となって取り組む、ということを意味している。