- ジャーナリスト・井上久男氏による、あまり指摘されない産業の課題を浮き彫りにする新連載。初回は「メイド・イン・ジャパン」の危機に切り込む。
- ダイハツ工業だけではなく、三菱電機や日産自動車、三菱自動車などでなぜ、品質不正が相次いでいるのか。井上氏は、企業側だけではなく、品質を保証する制度側にも課題があるのではと指摘する。
- 法規やルールを破ることは言語道断で当然ながら許されない。ただ、再発防止を徹底するには、企業を糾弾するだけではなく、制度側の課題や対策も同時に議論していく必要があるという。(JBpress)
(井上久男:ジャーナリスト)
国土交通省は1月16日、認証試験での不正を行ったダイハツ工業に対して組織体制を抜本的に刷新することを求める、行政処分に当たる是正命令を出した。同時にダイハツ製の3車種について、大量生産ための許可証とも言える「型式指定」を取り消す方針も固めた。正式に取り消されれば、その3車種の製造、出荷ができなくなる。
トヨタ自動車の完全子会社、ダイハツが開発・生産しているすべての車種で、大量生産を行うために必要な「型式指定」を取得するための認証試験で不正があったことを、ダイハツや調査に当たった第三者委員会が昨年12月20日に既に発表している。このため、ダイハツの国内全工場は現在、稼働停止に追い込まれている。
自動車業界では、法規やルールを破る不正が相次いでいる。2016年、三菱自動車で開発中のクルマで燃費データの改ざんが見つかり、翌17年には日産自動車の工場で無資格者が完成車を検査していたことが発覚した。さらに22年にはトヨタ系の販売会社「ネッツトヨタ愛知」で、道路運送車両法で定められて検査や点検が正しく行われなかったなどとして同社は略式起訴され、罰金を支払った。
各社が不正を行った直接的な原因は様々ではあるが、その背景には、認証試験の内容や車検制度自体が本当に今の時代に適合しているのかという課題があるように思えてならない。本稿ではその点を中心に考えてみる。