(冬将軍:音楽ライター)

90年代から現在までの、さまざまなヴィジュアル系アーティストにスポットを当て、その魅力やそこに纏わるエピソードを紹介していくコラム。今回紹介するDIE IN CRIESは、L’Arc〜en〜Cielのドラマー、yukihiroが在籍していたバンドでも知られているが、彼らがどんな音楽を奏でていたのか? 知る人ぞ知る近未来サウンドの全貌を紐解く。(JBpress)

ギターシンセ+5弦フレットレスベース+打ち込みのようなドラム

 今井寿(BUCK-TICK)、潤(PIERROT)、Shun(FANATIC◇CRISIS)……これまで触れてきたバンドのギタリストの話の中で、たびたび登場するのがギターシンセサイザーである。そのアバンギャルドな音色は90年代ヴィジュアル系サウンドを象徴するもののひとつ。今回触れるDIE INE CRIESの室姫深もまた、ギターシンセの名手として欠くことのできないギタリストだ。

 ギターシンセを簡単に説明するのなら、弦振動をデジタル信号に換える装置であり、ギターを弾いているのにアンプからはピアノやバイオリン、はたまた鐘や鈴といった、ありとあらゆる音を出すことができる。

 元を辿れば、BOØWYの布袋寅泰が1本のギターで楽曲に彩りを与えるために様々な音色を作るエフェクターを多用したことが大きい。ジャパメタからニューウェイヴに流行が移っていく中で、ギタープレイも速弾きからトリッキーなことをやる、誰も出したことのないようなサウンドを出すことに重きを置くギタリストが増えていったのである。そういったギタリストは俗に“エフェクタリスト”などと呼ばれた。

 そこで注目を浴びた究極のツールがギターシンセである。ギターシンセはキング・クリムゾンの再結成に参加したギタリスト、エイドリアン・ブリューがギターで象の鳴き声を真似するという突飛なプレイで一気に注目を浴びた。日本では1990年にブリューがギターで動物の鳴き声や独りでオーケストラを奏でるダイキンのCMが放送され、話題になった。

 前置きが長くなったが、そうしたギターシンセと、当時はまだロックバンドでは珍しかった5弦ベース、さらにフレットレスベース、そして要塞のようなセットで人力とは思えぬ無機質で複雑なドラム……という近未来的なサウンドを奏でていたバンドがDIE IN CRIESである。

 リアルタイム世代において非常に熱狂度の高いファンが多く存在し、現在でも、L’Arc〜en〜Cielのドラマー、yukihiro(以下本稿では当時の大文字表記“YUKIHIRO”で統一する)が在籍していたバンドとして名は知られているものの、各音楽ストリーミング配信やYouTubeでの公式映像もないためにその魅力がいまいち伝わりづらいこのレジェンドバンドについて、あえてこの2025年、令和の世に綴っていきたい。