刹那さと気品に溢れたキャッチーなメロディ
さらにDIE IN CRIESの特筆すべきところは、サウンド面では誰もやってこなかったマニアライクなことを詰め込んでいるにもかかわらず、キャッチーに振り切った歌モノバンドであることだ。楽器好きの人間を震え上がらせる存在であったと同時に、刹那さと高貴さが醸す気品に溢れたメロディの美しさは、マニアではない音楽好きにも「良い」と思わせる訴求力を持っている。
室姫の類稀なるメロディメイカーとしての才、KYOのボーカリストとしてのカリスマ性は活動していくなかで爆発していく。「言葉にならない‥‥」、「LOVE ME」(ともに『NODE』(1992年9月リリース)収録)、「to you」(1993年1月リリースシングル)、そして誰もが認める超名曲「LOVE SONG」(1993年11月リリースシングル)など、数多く珠玉の名曲を生み出した。
また他のバンドには見られない複雑で緻密なアレンジメントも深化。メジャーデビューから2年待たずして、1993年12月には既存曲のリアレンジ再録を主としたセルフカヴァーアルバム『Classique Ave. の飛べない鳩』をリリースするほどであった。
しかしこうしたバンドの急速な進化はメンバー間のベクトルの差異を生むことになり、1994年にバンドは活動休止。この年は、KYOがボーカリストとしてのポピュラリティを追求するようにソロ作品(シングル2枚、アルバム1枚)をリリース。片や室姫は海外でのオルタナティヴロックの隆盛に呼応するように、ソロプロジェクトとしてBLOODY IMITATION SOCIETYを結成、始動させている。
そして翌1995年に活動を再開させるも、7月2日の東京ベイNKホール公演にて解散する。解散決定後に制作されたラストアルバム『Seeds』(1995年6月リリース)は、実に興味深い作風になっている。
先述のDIE IN CRIESらしいキャッチーな最新ナンバー「種」然り、KYOのソロプロジェクトだった時代の楽曲「NERVOUS」の最新アレンジ、そして初期の雰囲気を持ちながらもどこか明るい響きに変化したKYOの声色が聴ける「太陽をまちながら」、良い意味でも悪い意味でも4人の不協和音が響く「輪舞~ロンド」といった、クオリティは高いが物議を醸す楽曲が揃い踏みであった。
前衛的で無機的な音楽性とサウンドを武器としていた彼らが、活動を重ねていく中でよりバンドらしくなっていった。だが、『Seeds』は本来バラバラの素養を持っていた4人がそれぞれのやりたいことを持ち寄っており、いい意味でのファンへの感謝といった懐古的なものは一切ない。音楽探究の結果というべきものだ。逆にいえば彼らの公約数の限界がここにあったのかもしれない。。