信長公出陣の像(清洲公園、写真:Brunch/PIXTA(ピクスタ)
2026年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』は、豊臣秀吉の弟・豊臣秀長にスポットライトが当てられ、そのユニークな視点で話題を呼んでいる。天下人となる秀吉(演:池松壮亮)を、秀長(演:仲野太賀)は右腕としていかに支えたのだろうか。第5回「嘘から出た実(まこと)」では、織田家中で御前試合が開かれることになり、秀吉は前田利家と対決するが……。今回放送の見どころについて、『戦国最高のNo.2 豊臣秀長の人生と絆』の著者・真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)
“熱血指南”の直後に裏返る家康の「二枚舌」
徳川家康といえば「腹黒い」「狸親父」といった印象が強く、天下統一を目指した「三英傑」(織田信長、豊臣秀吉、徳川家康)のなかでも、不人気な武将として知られる。
今回の『豊臣兄弟!』では登場して間もないが、早くも腹黒さを発揮した。名が「徳川家康」ではなく「松平元康」の頃となる。本稿では「家康」で統一する。
「桶狭間の戦い」で大将の今川義元が討たれて敗軍になると、兵糧をむさぼるように食べる家康。重臣の石川数正から急かされても涼しい顔で食べ続けて、こう言ってのけた。
「我々が必死で守った兵糧じゃ。すべて信長に奪われたのではしゃくではないか。少しでも減らしてやるのじゃ」
そんな「桶狭間の戦い」から2年後の永禄5(1562)年、信長と家康との間に清洲同盟が結ばれた。この清洲同盟は、信長が東の今川家を気にすることなく、美濃攻めに集中するために結ばれたもの。家康にとっても、三河から今川の領土へ攻め入るための基盤づくりに注力できる、というメリットがあった。
今回の放送では、清洲同盟の締結後、尾張から岡崎に帰る家康を、秀吉が見送ることに。道中で秀吉が「どうすれば松平様のようにお偉くなれますでしょうか」とアドバイスを求めると、家康はこう返答した。
「たやすいことよ。信長殿を信じることじゃ。そして誰にもできぬことをやってのけるのじゃ。恐れず、己を信じて突き進むのじゃ」
さらに左手で胸を叩くと「大事なのはここじゃ」と言って「熱意が人を動かし、勝敗を決する」と伝えている。
案外熱い男だと思いきや、秀吉と別れるや否や、家康は「すべて逆のことを言うてやったわ」と言って、家臣の数正と腹を抱えて笑いだした。
数正「何が大事なのはここでございますか。白々しくて思わず吹き出しそうになりましたわ」
家康「織田の下侍になんでわしの考えを教えねばならんのだ」
相当に意地が悪いように描かれているが、ここまで振り切ってくれると清々しく、SNSでは「これまでの家康で一番好き」という声も。ほかの者に渡したくないと兵糧を食べまくったのも「相手の利になることは絶対にしない」というポリシーを感じる。
史実では、やがて石川数正が家康を見限って、豊臣秀吉側に寝返ることになる。通常ならば家康がショックを受ける場面となるが、『豊臣兄弟!』での家康なら「やるではないか」とむしろ感心しそうなくらいだ。「いつも冷静な家康」が今後の展開のなかで、激情に駆られることはあるのだろうか。