戦国大名きっての「あだ名の達人」だった信長の“観察眼”

 そんな背景を踏まえると、利家からすれば秀吉よりも「挽回せねば」と、御前試合にかける思いが強かったともいえそうだ。客席からは、利家の妻まつが「旦那様! サルは山へ追い返してください!」と檄を飛ばすと、のちに秀吉の妻となる寧々がムッとして、こう叫んだ。

「藤吉郎さん! そんな犬っころに負けたら承知しませんよ!」

 結局、試合に勝ったのは利家で、信長からは「犬、見事であった。褒美をとらせる」と言われている。「犬」と呼ばれた理由は、利家は幼名が「犬千代」だったことから、信長がそうあだ名をつけたようだ。

 実際に信長はあだ名をつけるのが好きだった。秀吉を「サル」と呼んだのは有名だが、もっとひどいあだ名もあった。それは「はげねずみ(禿鼠)」である。

 のちに浮気を繰り返す秀吉のことを「禿鼠」呼ばわりしながら、「あの禿鼠が、あなたほどすばらしい女性をほかで見つけられるはずない」と、秀吉の妻・寧々を励ます書状が見つかっている。

 そのほかにも、四国で存在感を示す長宗我部元親のことを「鳥なき島の蝙蝠(こうもり)」と、ローカルさをいじったこともあった。『豊臣兄弟!』では、しばらく信長が物語をけん引することになる。信長ならではの呼び名に注目してみても面白いだろう。