特異すぎるサウンドとアレンジメント

 DIE IN CRIESは、もともとD‘ERLANGER解散後にボーカル、KYOが1991年に始めたソロプロジェクトであった。第1弾作品『NOTHINGNESS TO REVOLUTION』に、YUKIHIROと室姫深のユニット、OPTIC NERVEが参加。そこにTHE ACEのベーシスト、TAKASHIが加わり、DIE IN CRIESはバンド編成になった。

 ちなみにOPTIC NERVEとは、ZI:KILLを脱退したYUKIHIROが、THE MAD CAPSULE MARKET’Sを脱退した室姫と組んだユニットであり、インダストリアルミュージックやテクノ、EBM(エレクトロ・ボディ・ミュージック)といった前衛的なサウンドを武器としたユニットである。

 DIE IN CRIES、メジャー1stアルバム『VISAGE』(1992年3月リリース)の衝撃。退廃的な雰囲気を醸し、無機的なサウンドが差配する。D’ERLANGERやZi:KILLが確立した黒服直系の美学。UKゴシックロックからの流れを汲みながらも先鋭的で実験的な音が飛び交う。4人で初めて作られた楽曲「RAPTURE THING」は、フレットレスベースのぬめりあるフレーズとエッジの効いたカッティングギターが絡み合うインダストリアルな曲だ。

「水晶の瞬間~to immortality....」のイントロや、「仮面の下の表情」において聴けるTAKASHIの浮遊感と不可思議さが備わったフレットレスベースは、これまでの日本のロックバンドでは聴くことのなかったサウンドであり、KYOの色気あるボーカルと溶け合っている。当時は5弦ベースもフレットレスベースも、ロックバンドで使用されることはほぼなかった。そしてピック弾きが主流の中で、指弾きのスタイルも珍しかった。

 YUKIHIROは無数のシンバルとキャノンタムという胴が長く口径の小さいタムを数多く備えた要塞セットに、ピッチの高いスネアを駆使し、打ち込みかと思うほどの無機質で緻密なプレイを聴かせている。「仮面の下の表情」といった楽曲でのキャノンタムを使ったパーカッシヴなドラミングは聴きどころだ。

 そして、室姫のギターシンセである。このシーンでのギターシンセの使われ方はピアノやストリングスの音を出す、といった飛び道具としての使い方が主流であるが、室姫の使い方は音の拡がりを重視したエフェクター的な使い方が多い。

 冒頭で挙げたギタリストは、わかりやすくギターシンセサウンドを奏でていたが、室姫はギター本来の音とギターシンセの音を同時に発音させ、ミックスさせるという当時は誰もやっていない使い方をしている。

 正直、どれがギターシンセサウンドなのか、ギター弾きであってもじっくり聴かなければわからないだろう。異国の琴のような響きがする「FUNERAL PROCESSION」のイントロや「L.O.V.「 」・・・」のアルペジオフレーズといった、空間系エフェクトの延長線上にあるようなものが多い。

 DIE IN CRIESはこうした器材やサウンド面だけでなく、そのアレンジメントにも特異性が現れている。メジャーデビューシングル「MELODIES」(1992年2月)は、D’ERLANGER「DARLIN’」にも通ずる、硬派でダークさを醸しながらもキャッチーなビートロックナンバーであるものの、平歌のバッキングギターをあえて1コードで引っ張り、Bメロからサビへの起爆力を高めていくという手法が取られている。ギターが動かず、ベースが動きまくることでコードとアンサンブルのうねりを出し、サビで一気に拡がりを出して爆発させることは、ラストシングルとなった「種」(1995年5月リリース)に至るまで、DIE IN CRIESの得意とするものであった。