三菱自動車が発売した軽商用EV「ミニキャブEV」(写真:三菱自動車)
  • 三菱自動車が軽の商用電気自動車(EV)「ミニキャブEV」を国内で発売した。
  • EVの普及率が低い国内市場で、なぜ軽商用EVを投入するのか。実は、一般のEVにはない有望市場がそこにある。
  • 他方、これまで日本勢の牙城だった東南アジアでは、中国EVが席巻している。三菱自動車の加藤隆雄社長に、同社の電動車戦略や東南アジアのEV市場について話を聞いた。

(井上 久男:ジャーナリスト)

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 三菱自動車は12月21日、軽自動車の商用電気自動車「ミニキャブEV」を国内で発売した。日本国内では、充電設備の普及が不十分であることなど様々な理由から欧米や中国と比べて電気自動車(EV)の普及率が低い。だが、軽の商用分野はその伸びが有望視されている。

 主に企業が使う商用車は、製品や商品を運んだり、営業や作業の担当者が顧客先を訪れたりする際に用いられる。機関投資家からライフサイクル全体で脱炭素が求められる傾向にある上場企業では、自社の車両だけではなく、配送などを委託する取引先の車両にもEVを使うことが求められるようになってきた。特に物流事業者には、荷主の側からEVを使うことを求める場合もある。

「ミニキャブEV」の車内(写真:三菱自動車)

 こうした点が、軽の商用EVの伸びを期待できる主な理由だ。さらに、「ラストワンマイル」と呼ばれる、物流拠点から個人宅などへの短い距離の配送では電池が切れる可能性が低いうえ、早朝や深夜に住宅街などを走行してもEVは静粛性が高いのでクレームを受ける可能性も低い。また、運転手の労働時間が規制される「物流2024問題」では、運転手不足が予想される中、軽なら普通免許で乗車できる上に小回りが利いて使い勝手がよく、パートタイムの従業員でも運転しやすい。

 管理面でもメリットがある。事業所などの自動車置き場で夜間に普通充電すれば、8時間程度でフル充電できる。そのため、既存のエンジン車のようにガソリンスタンドに行く手間暇が省ける。

 日本では個人がEVを利用する場合、充電設備が老朽化していたり、急速充電設備がまだ不足していたりする課題もある。一方、商用の軽EVはこうした課題をクリアできるため、潜在ニーズは高いと言えるだろう。