
(井上 久男:ジャーナリスト)
「市場の変化が激しいため、開発のスピードを上げることが重要だ。現在は新車開発に55カ月かかっているのを30カ月に短縮していきたい」
4月1日付で日産自動車の新社長に就任するイヴァン・エスピノーサ氏が3月25日、報道陣を前にこう意気込みを語った。日産は将来投入する新車や、新技術の説明会を、開発拠点のテクニカルセンター(神奈川県厚木市)で開催。発言はその説明会でのものだ。
エスピノーサ氏は現在、チーフ・プランニング・オフィサーと呼ばれる商品企画を担当する役員。かつ執行の最高意思決定機関である経営会議メンバーでもあるため、今の日産が抱える大きな課題の一つ「スピード経営」について問題意識を強くもっていると見られる。
今後の日産車の在り方についてエスピノーサ氏は「ブランドを象徴し、DNAを体現する代表モデル、業績を向上させて成長を促進するモデル、製品ポートフォリオ補完のためにパートナーシップを活用するモデルと大きく3つに区分して考えていく」とも語った。
こうした説明会を開催した理由についてエスピノーサ氏は「色々な風評が流れ、日産の評判が悪くなって、社員たちのモチベーションが下がっていることが問題だと思っていた時に、デザイン担当の役員に相談したら『将来の技術やクルマを披露すべき』という流れになった」と説明した。
一般的に自動車メーカーは市場投入前の新車に関するデザインや技術をメディアに見せることを避けたがる。だが、日産はあえてそれを披露し、「日産の潜在能力」を世に示すことで、それが多くの社員にも伝わり、社員の士気を鼓舞させることを狙ったのだろう。
また日産は最適な商品戦略を市場ごとに強化していく計画も示した。