
スバルは4月3日、7年ぶりのフルモデルチェンジとなる新型「フォレスター」の予約販売を始めた。筆者はその最新モデルをひと足先に、千葉県内のクローズドエリアで試乗した。SUVのフォレスターは今やスバルの大黒柱だ。日本はもとより、スバルの主力市場であるアメリカでの人気を考えると、決して失敗が許されない最重要モデルである。フォレスターの歴史を踏まえて、新型の出来栄えを検証する。
(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)
「あれからもう7年も経ったのか…」
今回6代目となったフォレスターに乗りながら、2018年3月の米ニューヨークモーターショーでの5代目フォレスター世界初公開の光景を思い出した。そのとき、会場で開発統括者やデザイナーと「スバルにとってフォレスターとは何か?」という問いを立て、じっくりと意見交換した。
そこからさらに10年、時計の針を戻すと、スバルは企業として大胆にアメリカシフトした。
当時、国内と海外の両市場でスバルの需要は高止まりしており、さらなる需要を掘り起こそうとアメリカの「サンベルト」を狙う戦略に出たのだ。
サンベルトとは、西海岸のカリフォルニアから東に向かってアリゾナ、テキサス、ジョージア、そしてフロリダといった、年間の平均気温が高く、アメリカで乗用車販売数が多い地帯を指す。
従来、スバルはサンベルトより北側の「スノーベルトのクルマ」という商品イメージが強かった。西部では北カリフォルニアからオレゴン、そしてワシントン。中部ではコロラド、そして東部ではニューヨーク、ペンシルべニア、メーンなど、降雪量が多い地域でのいわゆる生活四駆、または登山、サイクリング、キャンプなどアウトドア志向が多いユーザー向けのブランドであった。

そうしたサンベルトを強く意識した当時のアメリカシフトでは、「インプレッサ」「レガシィ」そしてフォレスターについて、アメリカのユーザーの声を広く聞きながら市場を開拓するための商品戦略を模索した。
同時に、ディーラー網も刷新した。他のブランドとの併売店を無くし、またパパ・ママティーラーと呼ばれる小規模な家族経営型から、郊外で広い敷地を持つ先進的な店舗デザインへと大きくシフトさせた。
あわせて、広告戦略のひとつとして始めた、ボランティアによる社会貢献活動「ラブキャンペーン」がスバルの予想をはるかに超える規模に広がったことが、スバルのブランドを強固なものにしていく。
結果、アメリカでのスバル販売数は2010年代に入って右肩上がりとなり、2024年実績では市場シェアはテスラと同じ4%にまで達している。他メーカーと比較するとマツダ(3%)、BMW(3%)、メルセデス・ベンツ(2%)を凌ぎ、ホンダ(9%)の約半分という人気ブランドに成長している。