2024年秋に富士山麓で実施された、「クロストレック」ストロングハイブリッドのプロトタイプ試乗会の様子(写真:筆者撮影)

SUBARU(以下、スバル)が小型SUV「クロストレック」で新たに市場導入した、ストロングハイブリッド。2024年秋には、プロトタイプの試乗会が報道陣向けに富士山麓のクローズドエリアで実施され、筆者はその走りの実力を体感している。今回は、ストロングハイブリッドの最終組付け作業をしている、スバルの北本工場(埼玉県北本市)を取材。エンジニアから各種部品を実際に見ながらストロングハイブリッドの詳しい説明を聞き「スバルらしさ」を深く理解できた。「走り」と「技術」を中心に検証する。

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 今回訪れた北本工場は、産業機器事業の大宮製作所が1995年4月に移転したものだ。発電機や芝刈り機向けの汎用エンジンを生産していた。

 その後、汎用エンジンの生産・販売が終了し、部品の物流倉庫として活用されていたが、2022年12月に新たな生産拠点としてリニューアルを開始。2024年10月から、ストロングハイブリッドシステムのトランスアクスルの生産を始めた。現在はスバルにおいて最新の生産拠点である。従業員数は12月1日時点で256人、生産能力は年間18万6000台。

スバルAWDシステムの全体図。プレゼンテーションの投影資料(写真:筆者撮影)

 北本工場が生産するトランスアクスルとは、トランスミッションとデファレンシャルギアを一体化した装置を指す。スバルのストロングハイブリッドでは、このトランスアクスルに発電用と駆動用のモーターに加えて、後輪軸に駆動力を伝達するための電子制御カップリングを組み込んでいる。

トランスアクスルの内部構造。プレゼンテーションの投影資料(写真:筆者撮影)

 では、クロストレック・ストロングハイブリッドの走りを振り返ってみたい。

 走り出してすぐに実感したのは、「力強さ」である。

 その力強さを生み出しているのが、出力88kWの駆動用モーターだ。今回、その実物がトランスアクスルの一部であるケースに組み込まれる工程を見た。

 スバルによれば、このモーターはトヨタから供給されるものだ。トヨタ車にも採用されているが、それがどのモデルかは非公開だ。

 トヨタのハイブリッドシステムをスバル用に丸ごと移管しているのではなく、モーターも既存品をスバル向けに若干、仕様を変更しているようだ。

 再び、走りの感想に戻ると、走りが「がっしり」しているように感じた。大きな理由は、マイルドハイブリッドに比べて車重が約50kg増になったことにある。