
ジョブ型の浸透や人材不足背景に、初任給の大幅アップなどなにかと若手社員が優遇されているが、水面下で深刻な事態が進行していることが明らかになった。パーソル総合研究所の調査によると、20代男性社員の「出世欲」が急激に低下しているのだ。特に、既婚者と非既婚者との間で意識のギャップが顕著になっている。「管理職は罰ゲーム」とも言われているが、何が起きているのか。背景には、若手優遇の賃上げの副作用があるかもしれない。
(児島 功和:パーソル総合研究所・研究員)
課長になれるのは同期の約7人に1人
若者の出世意向・管理職意向の低さが問題視されている*1。しかし、そもそも若者が管理職になりたいと望んでも以前より管理職になれない現状がある。
厚生労働省の「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会」(2025年)では、年齢階級ごとの管理職比率が示されている*2。それによれば、ほとんど全ての年齢階級で年々管理職比率が低下している。
例えば、1990年の40~44歳大卒・大学院卒の約3人に1人が課長であったのに対して、2023年の同年齢階級同学歴では約7人に1人となっている。管理職は以前よりも“選ばれた社員”がなるものなのだ。
加えて、厚生労働省の同資料によれば、管理職になれる時期のピークも遅くなっている。課長の場合、1990年であれば40代前半がピークであるのに対して、2023年では50代前半となっている。
誰もが管理職になれるわけではない。しかし、企業の持続的成長を考えたとき、若者がその企業のリーダーたる管理職になりたがらないのは決して小さな問題ではない。
それでは、若者はなぜ管理職になりたがらないのであろうか。パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」のデータから考えてみよう。