- かつては喜ばれていたはずの管理職への昇進が「罰ゲーム化」している。そう分析するのは、パーソル総合研究所上席主任研究員の小林祐児氏だ。
- 人手不足で部下の管理だけではなくプレイヤーであることも求められ、パワハラ認定を恐れてまともな指導もできない。職場のしわ寄せが重くのしかかる。
- 小林氏の新刊『罰ゲーム化する管理職 バグだらけの職場の修正法』(インターナショナル新書)から一部抜粋して、2回に分けてお届けする。前編は、なぜ「罰ゲーム」になったのか。(JBpress)
- 【罰ゲーム化する管理職・後編】「クソゲー」から脱する方法、悪いのは上司のマネジメント力の低さだけではない
さて、なぜ管理職は現状のような苦境に陥ってしまったのでしょうか。「管理職が大変だ」という意見そのものは、以前から存在しています。経営学者のミンツバーグはあるマネジャーの言葉を借りる形で、管理職のことを「『いまいましいことが次々と降りかかる』仕事」と紹介しています。以前から楽なポジションではありませんでした。
しかし近年、「罰ゲーム」とまで呼ばれる深刻な状況になってきたのは、地殻変動のような変化が、中長期的なトレンドとして緩く長く続いているからです。ここからは、中間管理職を取り巻くマクロな環境の近年の動向について整理してみましょう。
図表1は、バブルが崩壊した1990年代から現在まで、特に中間管理職の役割や仕事に大きな影響を与えた変化を一覧にまとめたものです。
図中の上部、経営環境から見ていきましょう。まず挙げられるべきは、90年代初頭のバブル崩壊から続く経済の長期停滞と人手不足の進行です。
バブル崩壊以降、この国の1人当たりの実質GDP成長率は、1975年からの年平均4%台から1%台に下落しました。「失われた20年」と呼ばれてきたこの低迷は、令和に入ってからは「失われた30年」と囁かれはじめます。
同時に組織の高齢化が進み、賃金の高い中高年社員を多く抱え「人は必要だが、これ以上人件費は割けない」状況になった日本企業は、非正規雇用のパート女性とシニア、そして外国人労働者を低賃金で取り込むことで、どうにか競争力を維持してきました。デフレ環境下に最適化されたビジネスモデルと人材マネジメントが伸張していったのです。