中居問題の責任を取る形で辞任したフジテレビの港浩一社長(右)と関西テレビの大多亮社長(写真:共同通信社)

元タレント・中居正広氏がフジテレビのアナウンサーだった女性に性暴力を加えた問題で、総務省は同社と親会社フジ・メディア・ホールディングスに対して、「厳重注意」の行政指導を行った。世間一般の感覚からすると非常に軽く、放送業界内の馴れ合いにも映る。「やらせ」「捏造」など国民を騙す手法も後を絶たず、反省が生かされないのは、監督官庁や業界団体の対応が甘いからではないか。

(岡部 隆明:ジャーナリスト)

女性アナウンサーのアイドル化路線はフジテレビの黄金時代を支えたが…

 セクシーポーズをしてください。

 問題を調査した第三者委員会の報告書の中で、印象に残った言葉の一つです。これは、アナウンサーの採用面接時に選考員から学生に投げかけられたもので、複数名が「こういう質問があった」と回答したということです。瞬発力やリアクションの良さを試しているのかもしれませんが、破廉恥かつ不適切な質問です。

 フジテレビでは、加藤綾子さんの「カトパン」、高島彩さんの「アヤパン」など、「○○パン」(2000~2017年)と呼ばれる深夜のトークバラエティー番組がありました。「○○パン」シリーズは、セクシーポーズとまではいかないまでも、カメラワークも含めて、お色気を前面に出した趣向でした。

「○○パン」シリーズが始まる前の1980年代後半からフジテレビの女性アナウンサーは知名度や好感度の高さを誇っていました。女性アナウンサーのアイドル化路線は、フジテレビの楽しい空気を創出し、黄金時代を支える一定の役割を果たしたことは間違いありません。

 しかし、性を道具にするような発想が根底に流れていて、それが今回の問題にもつながっているように思います。男性視聴者の感情を刺激するだけにとどまらず、人気タレントの欲望を満たすために、「商品」のような扱いを受ける事態を招いたのです。

 事件は会議室で起こっているんじゃない。現場で起きているんだ!

 フジテレビの人気ドラマシリーズ『踊る大捜査線』で、織田裕二さんが演じる青島刑事が叫んだセリフです。私は、第三者委員会の報告書を読みながら、『踊る大捜査線』の場面を思い出しました。