
少子化・人口減少などを背景に、若手人材の獲得競争が激化している。しかし、日本企業が続けている新卒一括採用は会社の成長に結実しているのだろうか。多様性重視を標榜しながら、同質性・従順性を追求しているのではないか。とりわけ昨今では、AI(人工知能)を導入した選考も広がり、ますます同質性を生みやすくなっている。こうした矛盾を一掃した経営こそが、イノベーション実現につながる王道ではないか。
(岡部 隆明:ジャーナリスト)
3月末で2026年卒の半数以上に内々定
新卒採用の早期化が一段と進んでいます。就職情報会社マイナビによると、2026年度入社の新卒採用では、3月末時点で54.6%(前年比+7.2)の大学生・大学院生が内々定を得ているそうです。
昨今の新卒採用では、初任給の引き上げをアピールする企業が続出するなど、人材獲得競争は激化し、多くの企業は囲い込みに躍起になっています。

学生優位の「売り手市場」ですから当然と言えば当然かもしれません。しかし、違和感も覚えます。
なぜなら、新卒一括採用は日本の企業が重要テーマに掲げる「多様性の推進」とは合致していないからです。決まったスケジュールで、同じような年齢層の学生を一斉に採用する仕組みは、むしろ「同質性の強化」をもたらしていると言えます。
多様性の時代なので、今年の新入社員は国籍も、年齢も、出身大学もバラバラ・・・なんてことにはならないでしょう。結局、社風に合いそうな安心・安全な人材を獲得することを優先しているのではないでしょうか。
労働人口が減少し、人手不足の悩みを抱えている以上、多様性うんぬんよりも、とにかく若い人材が欲しいという事情があるのはわかります。しかし理由はそれだけではないでしょう。