人手不足を背景に初任給を引き上げる動きが広がっている(写真:アフロ)

人材獲得競争の激化もあり、「初任給アップ」を掲げる企業が相次いでいる。しかし、それは待遇の一部分を示したに過ぎない。学生に選ばれる企業になるためには、本当に知りたい「年収」と「年間労働時間」などの定量情報を明らかにするべきだ。効率的な働き方をアピールする企業は希少価値があり、「タイパ」(時間対効果を意味する「タイムパフォーマンス」の略語)を重視する現代の若者の価値観にも合致する。

(岡部 隆明:就職コンサルタント、元テレビ朝日人事部長)

2024年春採用は学生優位の「売り手市場」

 3月1日、2024年春に卒業予定の大学生・大学院生向けの採用説明会が解禁になりました。対象となる学生たちは「就活生」になり、社会と自分自身を何度も見つめ、悩みながら社会人のスタート地点を決めることになります。

 就職先を見定めるのは易しいことではありません。豊かさの指標である「1人当たりGDP」について、日本は世界で27位に甘んじています。厳しい経済環境で、進化を続けられる企業、そして自身も成長できる企業を選ぶのは難しいことだろうと思います。

 それでも、全般的には就活生にとって有利な追い風が吹いています。コロナ禍からの回復やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進などにより、人材の需要が高まっています。また、1年前の新卒採用が十分ではなかった企業も多く、人材獲得競争は過熱気味で、2024年春の新卒採用は学生優位の「売り手市場」になる見通しです。

 そうした動きのなかで注目しているテーマがあります。

 新入社員が初めて受け取る給与である「初任給」です。