カメラの前で的確に話すという高い能力を求められるアナウンサーだが…(写真:アフロ)

テレビでAIアナウンサーがニュース原稿を読むようになってきた。現在は限定的な使われ方だが、日進月歩のAIは放送局のアナウンサーの領域を侵食するだろう。ただでさえ、タレントやフリーランスを使いたがる傾向があり、専門職であるアナウンサーの立ち位置は揺らぐばかりだ。技術の進化が大きな変化をもたらす中で、企業はこれまでの人材採用・活用の考え方を変える時期に来ている。

(岡部 隆明:就職コンサルタント、元テレビ朝日人事部長)

ニュースを読み始めたAIアナウンサー

 前回のコラム「『アメトーーク!』の二番煎じがテレビをダメにした、おしゃべり番組の罪と罰」の中で、「10代、20代の半数が『ほとんどテレビを見ていない』という実態がある」というデータについて触れました。そういう背景からすると、将来の職業として若者が放送局のアナウンサーに憧れる度合いは、昔よりは相対的に低くなっているのかもしれません。

 それでも、今もアナウンサーの就職試験は難関です。東京の民放キー局で内定を勝ち取るのは容易なことではありません。どの放送局でもアナウンサー選考では、ニュース番組などのスタジオのセットを使って学生がさまざまな実演を行う「カメラテスト」が課されます。原稿読み、画面を見ながらの実況、フリートーク、選考員から指示されたパフォーマンスなどアナウンサーとしての適性が厳しく試されます。

 そんなアナウンサーですが、AI(人工知能)の登場で大きな曲がり角に立たされることになりそうです。AIが自動的に原稿を読み上げるAIアナウンサーが、既にNHKのニュース番組などで使われており、それほど違和感なく情報を伝えています。

 現在は読み上げる情報が必要なので、臨機応変な対応が必要な突発的なニュースには使えません。ただ、AIは学習し、進化を続けます。将来、競馬の実況や討論番組の司会もAIアナウンサーが担う可能性は十分にあります。AIアナウンサーが人間のアナウンサーの領域を侵食していくのは必至でしょう。

 にもかかわらず、現在の放送局は従来と同じ考え方でアナウンサーの採用を続けているようです。そこに私は危うさを感じます。

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