
(安田 理:安田教育研究所代表)
首都圏で受験者数が高止まりしている中学受験。2025年の私立中学入試は、難関校が受験者数を減らし、ボリュームゾーンである中堅校は前年に続き増加が予想されていたが、結果はそうならなかった。もうひとつ予想外だったのは、偏差値がさほど高くなく、話題にもなっていなかったのに応募者数を大きく伸ばした学校が多数あったことだ。事例を挙げながら今年の中学受験の動向を見ていこう。
(*記事公開時点で受験者数が公表されていない学校については「応募者数」で表記)
>>【表】出願者数(2月1日午前入試)が多かった私立中学トップ10と前年比
付属校以外の難関校はおしなべて応募者数を減らす結果に
中学受験の世界ではいまや“御三家”といっても実情を表していないが、一般の方向けには難関校を象徴する用語として分かりやすいので使用することにしたい。
東京の御三家は、男子校が「開成・麻布・武蔵」、女子校が「桜蔭・女子学院・雙葉」のことを指す。神奈川の御三家は、男子校が「聖光学院・栄光学園・浅野」、女子校は“横浜山手御三家”と呼ばれる「フェリス女学院・横浜共立学園・横浜雙葉」である。
さて、この12校のうち前年より受験者数が増えた学校は何校あっただろうか。
「有名な学校ばかりだから半数以上は増やしているだろう」
「男子校は増えても女子校は共学志向が強まっているから減らしているのでは?」
「付属校志向が強まっているから男子校も女子校も増やしたのは3分の1程度では?」
といった予想をされた方もいるだろう。実際に各校の受験者数の増減を前年対比で見てみると、以下のような結果だった。
【東京の男子校】開成(98.0%)・麻布(92.1%)・武蔵(94.8%)→すべて減
【東京の女子校】桜蔭(91.7%)・女子学院(99.7)・雙葉(97.4%)→すべて減
【神奈川の男子校】栄光学園(100%)・聖光学院(106.5%)・浅野(98.2%)→浅野は募集定員を減らした影響もあるが、増やしたのは1校のみ
【神奈川の女子校】フェリス女学院(96.2%)・横浜共立学園(95.6%)・横浜雙葉(98.4%)→すべて減
男子校は1増4減1同数、女子校はなんと6校すべてで受験者数を減らした。12校で唯一増やしたのは、2024年の大学入試で東大に3桁の合格者を出した聖光学院のみである。

そのほかの主な難関校も見てみよう。
【男子校】海城(101.8%)・駒場東邦(95.8%)・早稲田(97.9%)
【女子校】鷗友学園女子(109.4%)・吉祥女子(99.8%)・豊島岡女子学園(97.9% *新設の算数・英語資格入試の出願286名を除く4科)・洗足学園(86.1%)
【共学】渋谷教育渋谷(男子97.2%、女子110.4%)
【付属校】早大学院(94.2%)・学習院女子(97.5%)・立教女学院(124.8%)・青山学院(男子151.8%、女子115.2% *入試日が2月2日から3日に移動)・慶應中等部(男子96.8%、女子88.3%)・早稲田実業(男子104.0%、女子103.7%)・慶應普通部(118.6%)
進学校で増加したのは海城、鷗友学園女子、渋谷教育渋谷の女子くらいしかなく少数派。付属系では立教女学院、青山学院、早稲田実業、慶應普通部が増と多数派である。このように付属系を除いて難関校はおしなべて受験者数を減らしたことが2025年入試の大きな特徴であった。
