トップの危機感はなぜ伝わらないのか。写真はイメージ(写真:buritora/Shutterstock.com)
「自分はちゃんと仕事をしている、悪いのは上層部だ」。低迷企業に蔓延するこの他責思考は、社長が「危機感を持て」と叫んだところで変わらない——。沈滞する組織を甦らせ、経営トップを務めた16年間で売上高を6倍にまで成長させた三枝匡氏(ミスミグループ本社名誉会長)が見つけた不振企業再生のポイントとは。
(*)本稿は『決定版 閉塞企業を甦らせる―高成長・国際化・経営者育成の同時変革―』(三枝匡著、KADOKAWA)の一部を抜粋・再編集したものです。
「危機感を持て」と叫ぶ社長ほど、組織をダメにする理由
低迷企業では、会社全体が危機的状況に陥っているにもかかわらず、社員個人としてはさして痛くない状態が続いてきた。「自分はちゃんと仕事をしている、悪いのは上層部や他部署だ」と心の中で批判して溜飲を下げている社員が多い。
日本で歴史的に大企業病と呼ばれてきた病気が進み、業績悪化がさらに進むと、改革の入り口でこの組織病が障害になって、改革を開始することさえ難しいという状況に陥っているのである。
会社が大きな赤字を出しているのに、社員はそれを聞いて初めのうちは大変だと思うが、やがてそれに鈍感になり、さして危機感を抱かなくなる現象は、なぜ起きるのだろうか。
この単純な質問に対して、社員の「危機感が足りないからだ」と経営者が声高に叫んだところで、答えにならない。むしろその言葉を叫ぶことで役割を果たしていると考える社長ほどおめでたい人はいない。
なぜなら、いつもの私の駄洒落だが、社員は、危機だ危機だと聞き飽きているのである。危機感が足りないのは正しい指摘だが、目の前の社員一人ひとりがなぜ危機感を持てないのか、そうなっている理由を解き明かして一人ひとりに迫ることをしない限り、組織の危機感は高まらないのである。
