(写真:filins – stock.adobe.com)

CMと識別しにくいドラマ仕立てのテレビCMが気になっている。なぜなら、「誤解を招く広告を排除する」としている日本広告審査機構はもちろん、放送法の趣旨にもそぐわないと感じるからだ。民放にとってスポンサーの確保は重要だが、視聴者が後回しになってはいないだろうか。「貧すれば鈍する」に陥らないよう、企業審査やCM考査をいっそう厳格に運用すべきである。

(岡部 隆明:就職コンサルタント、元テレビ朝日人事部長)

「広告のまぎらわしい、ダメダメ!」とJAROは言うが…

 先日、民放のテレビドラマを録画視聴していて、「おや?」と思いました。

 ドラマに出演している俳優が新たなシーンを演じていると思ったら、実はCMだったのです。

 私はまんまと騙されました。本編の直後に本編のようなCMが流れたので、ドラマが続いているように錯覚したのです。なぜならドラマの舞台と同じ業界のCMに、そのドラマの俳優が役柄のまま出ていて、設定が非常に似ていたからです。

 録画を巻き戻して確認してみると、当初は気づかなかったのですが、画面の左上に「これはCMです」という表記がありました。私は俳優のセリフや表情を注視していたので、画面の端の小さな文字を捉えられなかったようです。

 ドラマの出演者を使ったCMについては、以前から時々出くわし、「CMか…」と何となく看過してきましたが、今回は問題意識が芽生えました。

 というのも、その数時間前にリアルで見ていた生放送の番組で日本広告審査機構(JARO)のCMを見たからです。JAROは嘘や大げさ、誤解を招く広告を排除して、消費者から信頼される広告を作るために、広告主や放送会社、広告会社などの企業が集って設立された公益財団法人です。

「広告のまぎらわしい、ダメダメ!」

 JAROのCMは、こう言って、戒めていました。この戒めと全く逆に、本編のように思わせる、まぎらわしいCMを見せられたので、これはどうしたものかと疑問が湧いてきたのです。