放送法12条には何と書いているか?

 視聴者をCMに釘付けにしたいという提供スポンサーの思いは理解できます。その意図を汲んで、放送局、広告会社、スポンサーが三位一体となって、ドラマの出演者を使ったCMを製作するのだと思います。

 しかし、こうしたCMを、工夫をこらした戦略的な手法だと受け入れていいのでしょうか?

 私は視聴者を惑わす、あざとい手法であり、不適切なのではないかと感じています。なぜなら、「誤解を招く広告を排除する」というJAROの働きかけに逆行しているばかりか、放送法に反しかねないのではないかと思うからです。

 “放送事業者は、対価を得て広告放送を行う場合には、その放送を受信するものがその放送が広告放送であることを明らかに識別することができるようにしなければならない”

 放送法第12条ではこのように書かれています。わかりやすく言い換えると「放送局がCMを放送する場合は、視聴者が『これはCMである』と明らかにわかるようにしなければならない」ということです。

 ドラマ仕立てのCMには、「CMだと思わせたくない」「ドラマの一部分だと捉えてもらいたい」という狙いが潜んでいます。「CMである」と、なるべく気づかないようにする意図をもったCMは、放送法の「広告放送であることを明らかに識別することができる」という趣旨に反するのではないでしょうか。

 たしかにドラマ仕立てのCMには、画面のどこかに必ず「これはCMです」と表記されています。その表記がCM考査をクリアしている、つまり、「放送して何ら問題ない」という大義名分になっているのでしょう。実際、これまでいくつもドラマ仕立てのCMは放送されていて、問題になったという話を聞いたことがありません。