スポンサー企業の審査とCM内容の考査はあるが

 そこまで目くじらを立てなくてもいいのではないかという意見もあるでしょう。しかし、CMも番組と同様に放送の一部です。視聴者(消費者)に与える影響も大きいので、軽々に扱うことはできません。だから、民放ではCMを流したいという企業の審査とCM内容の考査が日々、行われています。

 二十数年前に私がテレビ朝日の営業に在籍し、社内調整をしていた時のことです。それまで世帯視聴率が20%を超え、今では考えられないくらい高視聴率だったプロ野球の巨人戦の中継から、提供スポンサーが少しずつ降り始めていました。一方で消費者金融各社が巨人戦のスポンサーに名乗りを上げていました。

 年間十数試合を放送する巨人戦に消費者金融をスポンサーとして認めるかどうかについて、営業上層部で検討されました。多重債務者の増加や激しい取り立てなどもあり、いわゆる「サラ金」には社会から厳しい目を向けられてきた経緯があったからです。

 ただ、最初から結論は見えていたように記憶しています。間もなく、武富士、プロミス、アコム、アイフルなどがスポンサーとなることが決まりました。営業への適性がなかった私は、消費者金融のCMの版図が拡大していくことに対し、胸の中にわだかまりが沈殿しました。

消費者金融に対する社会の目は厳しかった(写真:ロイター/アフロ)

 消費者金融各社としては、トヨタ自動車や日産自動車、サントリーやキリンビールなどの大手企業と肩を並べて巨人戦のスポンサーになることは企業のイメージ戦略上、大きな意味があったはずです。また、放送局としては、脱落したスポンサーの穴埋め以上の収入が獲得できるメリットがありました。

 消費者金融のCMには「借り過ぎに注意」という文言が入っていました。お金をたくさん借りて欲しいはずなのに、そういう必要があるCMは矛盾をはらんでいます。「これはCMです」と同様、そうした文言を入れることでCMとして認められるということだったと思います。