メルカリ利用者を狙った「返品詐欺」が問題となっている(写真:當舎慎悟/アフロ)

フリマアプリのメルカリで起きた「返品詐欺」騒動。注目を集めたのは11月のX(旧Twitter)でのメルカリユーザーの告発。戦車のプラモデルを出品したところ、購入者から「パーツが破損している」という苦情が入り、返品に応じることに。ところが返品されたのはパーツが抜き取られた枠やゴミだった。なぜ、このような事例が発生しているのか。だまされないようにするにはどうしたらいいのか。ITジャーナリストの高橋暁子氏に話を聞いた。記事最後にメルカリ側の見解も掲載している。

(湯浅大輝:フリージャーナリスト)

「返品不可」が詐欺の温床に?

──メルカリの「返品詐欺」騒動が注目を集めています。高橋さんはメルカリユーザー同士のトラブルについて取材経験が豊富ですが、こうした問題の本質はなんでしょうか。

高橋暁子氏(以下、敬称略):今回の問題は、メルカリが出品者に対して「『返品不可』と記載することを禁じている」ところに一端があります。

 このルールをメルカリが設定する大きな理由は、購入者を守る、つまり「出品詐欺(違う商品が届くこと)」を防ぐところにあります。返品詐欺を働く人間はこのルールを悪用することで、欲しい商品を「無料」で得ているのです。

高橋 暁子(たかはし・あきこ) ITジャーナリスト・成蹊大学客員教授
SNSや情報リテラシー教育が専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育事情に詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナー、講義、委員などを手がける。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)、『できるゼロからはじめるLINE超入門 iPhone&Android対応』(インプレス)など著作は20冊以上。

 私は数年前からメルカリにおける返品詐欺の問題を追っていますが、実は話題になっていないだけで、これまでも「商品のすり替え」問題は水面下で発生していました。「ブランドバッグを出品したら傷がついていると言われ、返品に応じると偽物が返ってきた」「新品の商品を出品したのに、中古品が返ってきた」など、類似するケースはいくつも聞きます。

 こうした事例においては、返品不可記載ルールがある手前、出品者も返品に応じるしかありません。身の潔白を証明できる出品時の梱包作業の撮影などを行なっているユーザーは極めて少数で、泣き寝入りするしかないのです。

──SNSで見られる返品詐欺の告発については、購入者側に詐欺を働く明確な意思があるようにも思えるのですが、警察は対応しないのでしょうか。