出品者は「確実にだませるカモ」か?

高橋:ユーザー間の取引において「故意」を証明することが現実的に難しい以上、警察が積極的に対応することはないのではないでしょう。

 今回のケースで当てはめれば「返品する際に『部品を抜き取ってゴミを送ってしまった』けれどそれは故意ではありません」と購入者が主張すれば、「未必の故意(犯罪事実に対する確定的な認識・許容がない状態)」という言い訳も成り立ってしまい、罪に問うことは難しいのです。

 小口の詐欺師は「証拠を残すことが難しい」という出品者の弱みにつけ込み、出品者を「確実にだますことができるカモ」のように考えているのでしょう。

──メルカリ側は、今回の件を受け「お客さまサポート体制の強化・補填の拡大・不正利用者の排除」といった対応策を講じるとしています。

「返品詐欺」騒動の発端となったメルカリユーザーがXに投稿した画像(出所:Xより)

高橋:「不正利用者の排除」という対応については、確かに詐欺的行為を複数回働いているユーザーのアカウントを停止することも可能だと思います。

 ただ一方で、返品詐欺を働いているユーザーは少なくないと見られ、メルカリ側としても全てを把握するのは不可能だと思われます。プラモデルの件で返品詐欺の認知度が高まったのは、被害者ユーザーが相当詳細に経緯をポストし、それが多くのSNSユーザーの目に触れたからでしょう。

 そもそもの問題点になりますが、「返品詐欺にあった」と証明するためには、出品したユーザー側が販売する際に、商品を事細かに撮影するなどして証拠を残しておく必要があります。そうしていない多くのユーザーは、証拠がないことで泣き寝入りしています。メルカリとしても、証拠がない以上、不正利用者の排除には積極的に動けないのではないでしょうか。

 被害に遭った人に対する補填の拡大についても、あくまで証拠画像・動画が残っていることが前提でしょうから、すぐに進むとは思えません。

──抜本的な対策はむずかしいということでしょうか。