ウクライナの戦場では、ロシア軍の攻勢が加速し日々その占領地域は拡大している。
米国では、ウクライナ戦争の早期停戦を主張してきたドナルド・トランプ大統領が令和7(2025)年1月20日に就任する。
今後ウクライナ戦争はどうなるのであろうか。
崩壊するウクライナ軍
ウクライナ軍は、NATO(北大西洋条約機構)の計画に従い、NATOの新型装備と東部ドンバス地区に拘置していた精鋭の予備隊を投入して、2024年8月、万全の企図秘匿のもと、満を持してロシア・クルスク州内への越境攻撃を敢行した。
現地軍将校にも3日前まで計画を知らせなかったほど徹底した企図の秘匿が成功し、ロシア軍は奇襲を受け、ウクライナ軍は一時、1300平方キロ以上の区域を占領することに成功した。
しかし、東部ドンバスで攻勢を続けるロシア軍主力をクルスク正面に転用させ、ドンバス正面のロシア軍の攻勢を弱めるという、ウクライナ軍が狙った戦略的意図は失敗に終わった。
ロシア軍は主力を転用せず、クルスク正面は各種集中火力による制圧と一部の徴集兵を主体とする攻勢防御で応じた。
その後のクルスク正面の戦況は、火力に勝るロシア軍が占領地域の半分以上を奪還し、ウクライナ軍は侵攻部隊の半数以上が死傷し180両以上の戦車を破壊されるなど大損害を受け、ロシア軍が優勢になっている。
ウクライナ軍は増援部隊を送り込み反撃を試みているが、守勢に立ち徐々に占領地を奪還されており、ロシア軍はウクライナ領内のスーミ北部で両翼からクルスク侵攻部隊の背後を包囲する態勢を取りつつある。
東部ドンバスの北部クピヤンシクでは、西側を流れるドニエプル川支流のオシカル川の線までロシア軍が迫り数カ所で渡河しており、同市は包囲されオシカル川東岸がロシア軍に占領されるのも近い。
東部ドンバスの交通の集約点で補給と部隊増援の重要拠点でもあるポクロフシクも、南部と東部からロシア軍が攻撃中であり、その一部は同市の西方に進出し包囲態勢をとっている。
ポクロフシクの西方にはドニプロ川まで陣地線がなく、ロシア軍の進撃速度はさらに加速するとみられる。
ロシア軍は2024年11月の1か月間で新たに725平方キロを占領したと、12月3日にフランスメディアが報じている。
この面積は開戦以来の1か月間の占領面積としては過去最大であり、ここ数か月間月間拡大面積は急増し、ロシア軍の進撃速度は加速している。
ポクロフシク奪取後はさらに加速するとみられ、ウクライナ軍は既に崩壊状態になっている。
ウクライナ軍は補給も部隊の増援も交替もなく士気が低下し、包囲の脅威に晒され投降も増加していると報じられている。
徴募する兵員の不足から、現在4万5000人を超えている女性兵士を新たに徴兵するとの報道もある(『ニューズウィーク』2024年10月21日)。