新年を迎えたものの、世界の三大戦略要域である東アジア、中東、欧州は戦争がいつ起きてもおかしくない状況か、戦火に見舞われたままだ。
そのなかで、開戦から2年に達しようとしているウクライナ戦争は、ロシア勝利の見通しが高まっている。
ウクライナ戦争の現状と今後の見通しについて概観し、最後に日本の今後の在り方について付言する。
威力を発揮できず南部正面で敗退したNATO型編成・装備のウクライナ軍
2023年6月初旬から始まったウクライナ軍の攻勢は、2023年11月末に失敗に終わった。現在はロシア軍が全正面で本格攻勢に出ている。
その直後の2023年6月13日にウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナは「戦車160両、装甲車360両以上を失ったが、ロシアが失った戦車は54両だ」と述べた。
ロシアの損害は相手の10分の1で、軍事作戦の目的は不変だと述べている。また、戦死者数についても、ウクライナ軍はロシア軍の10倍だと発言している。
いずれも強気の発言だが、ロシア軍の徹底した火力消耗戦によりウクライナ軍が2022年9月から行ってきた攻勢作戦により大量の兵員と装備の損害を出していることを指摘し、また攻勢を繰り返しても同じ結果になると警告したものと受け取れる。
ウクライナが再度攻勢を試みた背景には、NATO(北大西洋条約機構)の支援があった。
2023年6月からの攻勢は、NATOから供与されたレオパルド戦車、ブラッドレー装甲戦闘車、火砲、対空・対戦車ミサイルなどの新鋭装備とNATO加盟国で訓練された精鋭部隊12個旅団、約6万人を基幹とする本格的な攻勢であった。
この攻勢により、ウクライナ軍もそれを支援するNATOも、南部ザポリージャと東部ドンバスのロシア軍を分断し、占領地域の多くを奪還できるものと期待されていた。
攻勢戦略の全般構想は当初、アゾフ海に最も近い南部ザポリージャ正面の戦線から突破してアゾフ海に進出し、ロシア軍を分断する。
その後、戦果を拡張してクリミア半島を奪還するとともに、東部ドンバスのロシア軍も撃退するというものだったと思われる。
ただし、具体的な戦力配分については、米側とウクライナ側では意見が一致しなかった。
米軍側はザボリージャ正面のロポティネ地区に攻勢部隊の全力を集中するようウクライナ側に勧告した。
これに対しウクライナ側は、戦力を集中してもロシア軍の航空攻撃やミサイルの集中攻撃を受けて壊滅するおそれがあるとし、戦力を分割することを主張したと伝えられている。
その結果、ウクライナ軍は戦力を3分し、激戦地区の東部ドンバスのパフムート、アディエフカ及び南部ザボリージャの3正面から攻勢を発動することを主張した。
結果的にウクライナの主張が通り実行に移された。
特にロポティネ正面には、NATO型編成・装備と訓練された兵員からなる精鋭7個旅団が集中され、ロシア軍の陣地帯に対する突破が試みられた。