
(鷹橋忍:ライター)
今回は江戸時代の女性の化粧について、大河ドラマ『べらぼう』の時代を中心に、取り上げたい。
眉化粧:なぜ、吉原の女将たちが眉を剃り落としているのか?
現代の女性の化粧においても、眉は重要なポイントである。
故に、水野美紀が演じる松葉屋の「いね」や、安達祐実が演じる大黒屋の「りつ」、かたせ梨乃が演じる二文字屋の「きく」など女郎屋の女将たちが、揃って眉を剃り落としているのに、違和感を覚えた方も少なくはないのではないだろうか。
江戸時代の庶民の女性は、懐妊後、あるいは出産後に、眉をすべて剃るのが、ルールだったという。
庶民の女性が剃るのみだったのに対し、上流階級の女性は剃った後に眉を描いた。
上流階級では、女性の眉化粧の決まりごとは礼法として確立した。
上流階級の女性は家々の礼法に従い、ある程度の年齢に達すると眉を剃り落とし、定められた形の眉を描いたという。
なお、それぞれの家の礼法により、眉化粧をする年齢や、眉の描き方などは、微妙な違いがあったと見られている(以上、山村博美『化粧の日本史-美意識の移りかわり-』)。
当時の結婚適齢期は14~18歳くらいであり、20歳以上の女性はほとんど眉を剃っていたが、江戸後期の風俗誌『守貞謾稿』(喜田川守貞著)によれば、浮世絵には20歳を超えた既婚女性でも、「意匠ヲ以テ眉ヲ描ク」、すなわち、美しく見せるために眉が描かれたという(高橋雅夫『化粧ものがたり-赤・白・黒の世界』現代語訳参照)。