
(山田 稔:ジャーナリスト)
「数日遅れのエイプリルフールだと思いたい」
トランプ関税ショックが世界市場を大混乱に陥れている。4月3日のNY株は相互関税による景気後退リスクを嫌気して急落。ダウ工業株30種平均は前日終値比1679ドル安の4万0545ドルまで下げた。4日の日経平均株価も連日の大幅安で4万4000円台を割り込み、終値は前日比955円安の3万3780円だった。年初来高値4万0083円よりも15%以上も落ち込んでいる。
加えて4月は値上げのオンパレード。食品だけで4200品目を超え、電気、ガス料金も上がる。しかも実質所得はマイナス。石破政権の“経済無策”が八方ふさがりの国民生活をさらに窮地に追いやることになる。
予想を上回るトランプ政権の相互関税発表に混乱した世界市場は大幅安に陥った。
「数日遅れのエイプリルフールだと思いたいよ」
60代の男性が頭を抱える。昨年12月で定年延長も終了し、今年から年金生活者となったこの男性は、退職金2500万円のうち1500万円を老後資金のために株式に投資していた。
今思えばタイミングが悪かった。優良銘柄を中心に選んだのだが、購入したのが年初来高値を付けた1月だったのだ。まさか3カ月後に年初来安値を付けるとは夢にも思わなかった。
4月3、4日のわずか2日間で残高はみるみる減った。1月の購入時点と比べると2割近い減少だ。投資の利益確保で物価高騰はラクに乗り切れると踏んでいたのが、真逆の展開となってしまった。もはや株価ボードを見るのもつらいと嘆く。
「持てざる者」の生活はさらに深刻だ。数年前に妻に先立たれた70歳の男性は国民年金年額約83万円が生命線。預金はすでに底をついた。毎月7万円ほどでやりくりしているが、昨年来のコメをはじめとする食品の価格高騰が痛い。好きな酒も1日、100円前後の缶酎ハイ1缶が精いっぱいだ。
この先の見通しは全く立たない。独居生活で、病に倒れたら完全にアウトだ。ちなみに東京都内だけで89.5万世帯(2020年)が一人暮らしの高齢者(65歳以上)だ。