トランプ関税で世界の株式市場が暴落している(写真:UPI/アフロ)トランプ関税で世界の株式市場が暴落している(写真:UPI/アフロ)

 デタラメなトランプ関税によって世界のマーケットがクラッシュしている。為替に目を転じれば、株式市場の暴落によって円相場は円高に振れているが、2月の日米首脳会議の合意とトランプ関税の帰結である「対米投資と対米輸入は増加、対米輸出は減少」という組み合わせは明らかに円売り。為替市場は米国経済の先行きを悲観した米金利低下に応じて円買い・ドル売りが優勢となっているが、長い目で見れば円売り・ドル買いがさらに定着する話になるのではないだろうか。(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

翻意を促せるのは金融市場の圧力か

 トランプ米大統領は「解放の日」と表現した4月2日、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、「相互関税(Reciprocal Tariffs)」の内容を発表した。

 まず、すべての国(※現時点ではメキシコ・カナダだけは除外)に一律10%の関税を課した上で、各国が米国製品に課している関税・非関税障壁を考慮し、それと同等またはそれ以上の関税を米国が課すことになる。

 当然、商慣行などは各国さまざまで非関税障壁は異なるため、各国ごとに最終的な相互関税の仕上がりは変わってくる。

 関税適用のスケジュールはまず、一律10%部分に関しては4月5日午前0時1分(米国時間)、次に特定の国々を念頭においた相互関税が4月9日午前0時1分(同)に発効する。

 既報の通り、日本への相互関税は24%と設定されている(図表①)。この前提として、トランプ政権は非関税障壁などを含めると日本は米国に対して実質46%の関税を課している状態にあると認定し、46%の約半分に相当する24%の追加関税を適用すると主張している。

【図表①】

 ちなみに、EUは実質39%に対して20%、中国は実質90%に対して34%、ベトナムは実質90%に対して46%と各々大きな追加関税が賦課されている。

 従前の石破首相の発言などを踏まえれば、政府はこれらの関税措置に対し、米国との交渉を通じて関税引き下げや撤廃を目指すと思われるが、国家非常事態を宣言した上で満を持して打ち出したこの一手を覆す意思があるのか。

 事前のベッセント財務長官の発言や一部報道では「相互関税」はあくまで「上限」の役割を果たすものであり、ここから交渉余地もあるとの観測も飛び交っており、現時点で予断は持てない。

 仮に、交渉の余地なしとの状況に至った場合、この翻意を促せるとしたら金融市場からの圧力しかないだろう。本日東京時間の日経平均株価も前日比▲1000円以上下がってスタートしており、恐らく他市場でも同じような反応が予見される。