
(山田 稔:ジャーナリスト)
内閣支持率も大きく落ち込み、もはや詰んだも同然
「嘘も百回言えば真実となる」――。ナチス体制下のドイツで宣伝大臣だったゲッベルスの有名な言葉だ。
商品券10万円問題で窮地に追いやられている石破茂首相の「会食のお土産として渡した。政治活動でもなく、政治資金規正法上も問題はない」という釈明も百回続ければ真実になるのだろうか。答えは否だ。それは会合に出席した15人の新人議員全員が、白封筒を返却した事実が「真実」を物語っている。
政治資金問題が国会でクローズアップされている時期に、訳の分からないカネでつまずいた首相の行動は“自爆”としか言いようがない。政治の師と仰ぐ田中角栄元首相の業績に追いつくどころか、負の「金権」だけを真似て沈もうとしているかのようだ。同じ日本海側出身の政治家とはいえ、その器の大きさは月とスッポンだったか。
政権の座についてから半年近く。この間の言動ですっかりお里が知れてしまった石破首相がどう言いつくろうが、もはや国民は何も信じない。それは商品券問題発覚後の各社の世論調査結果で明らかだ。内閣支持率は軒並み大きく落ち込んだ。
・朝日新聞(3月15、16日実施)支持26%(前回比-14%)/不支持59%(同+15%)
・毎日新聞(3月15、16日実施)支持23%(同-7%)/不支持64%(同+10%)
・読売新聞(3月14~16日実施)支持31%(同-8%)/不支持58%(同+15%)
商品券問題については、どの調査でも7割以上が「問題だ」との認識で、「問題ではない」を大きく引き離している。これが国民のいたって普通の受け止め方なのである。令和7(2025)年度予算案をめぐる衆院予算委員会でのお粗末対応に加えて今回の自爆で、本来ならばこの政権は、もはや詰んだも同然である。永田町関係者はこう断罪する。
「高額療養費制度見直しを巡る石破首相の答弁、右往左往ぶりで、この人はやはり総理としての器ではない、と見限った人が多いのではないか。
社会的弱者に寄り添うという姿勢が全く見られなかった上、政治的信念もうかがえなかった。最後は結局、見直しの撤回に追い込まれた。高校授業料無償化では、政権維持のためだけに維新にすり寄る見苦しさを露呈した。そんな醜態に辟易としていたところに、商品券問題。国民が愛想を尽かすのは当然だろう」