公立・私立の格差拡大が懸念されている高校授業料無償化公立・私立の格差拡大が懸念されている高校授業料無償化(写真:maroke/Shutterstock.com)

山田 稔:ジャーナリスト)

コメ、医療に続く石破政権の「失政第3弾」

 国民生活よりも政局が優先される永田町らしいニュースである。高校授業料の無償化と社会保障改革などに関する文書で自民、公明、日本維新の会が合意し、令和7年度予算の今年度内成立が確実となった。

 石破茂首相率いる少数与党政権が予算成立に向けて取り込もうとしたのは、当初は「103万円の壁」撤廃を主張していた国民民主党だったはず。ところが、国民民主が「178万円」にこだわると協議は進まなくなり、与党側は首相と旧知の仲の前原誠司氏が共同代表を務める日本維新の会に急接近。維新が要求する高校授業料の無償化をのむことで決着したわけだ。

高校授業料無償化などで正式に合意し、写真に納まる公明党の斉藤鉄夫代表、自民党総裁の石破茂首相、日本維新の会の吉村洋文代表高校授業料無償化などで正式に合意し、写真に納まる(右から)公明党の斉藤鉄夫代表、自民党総裁の石破茂首相、日本維新の会の吉村洋文代表(写真:共同通信社)

 しかし、高校授業料の無償化には教育現場だけでなく各方面から反対論が続出していた。にもかかわらず政権維持のために耳を貸さなかった石破首相への失望の声はますます強まりそうだ。

 2月上旬のトランプ大統領との首脳会談を乗り切ったことで、石破首相は予算成立に向けた政局運営に妙な自信を持ってしまったのだろうか。帰国後、遅すぎた備蓄米放出、高額療養費制度改悪、高校授業料無償化と立て続けに、国民生活に直結する重大政策を強行しようとしている。

 いずれも1月の施政方針演説でほとんど触れられていなかったテーマである。演説には「高額療養費制度の見直しになどにより、保険料負担の抑制につなげます」との文言があったぐらい。もちろん具体的な削減額などには触れられていなかった。施政方針演説は「楽しい日本」を目指すとか、「令和の日本列島改造」を強力に推し進めるといった夢物語が中核となっていた。

 その演説からわずか1カ月で決められたのが備蓄米放出、高額療養費制度改悪、そして高校授業料無償化である。

 備蓄米放出をめぐっては、政策的な厚みがなく、価格が下がる保証もない。今後の農政改革の理念も見られない。高額療養費制度改悪にはがん患者団体など各方面から「受診控えで命を縮める」と猛反発が起き、自民党のスポークスマンと言われている政治評論家までもが「政治としてやってはいけない」と公言するありさまである。

 そして失政第3弾が高校授業料無償化である。