
(山越 泰:フリージャーナリスト)
学校推薦型選抜、今年は87人が合格
東京大学の合格者が3月10日に発表された。例年通り、高校別合格者数ランキングには難関とされる私立中高一貫校の名前がズラリと並び、常連校と新強豪校の勃興がメディアで喧伝されている。
ところで、一部の受験生は早くも2月12日に合格の知らせを受け取っていた。東大の学校推薦型選抜にチャレンジした受験生のうち、87人が見事に赤門*をくぐることになったのだ。
*東大本郷キャンパスのシンボルとして知られ、国の重要文化財。正式名称は旧加賀屋敷 御守殿門(ごしゅでんもん)

東大が日本の高等学校等の生徒を対象に学校推薦型選抜を開始したのは2016(平成28)年度の入学者選抜から。いったいどのような学生が合格したのか。大学側がインタビューを行った合格学生の志望動機が実に興味深い。
「開発経済学を通して現代経済のあり方と資本主義のその先を捉えたい」
「生命に本質的に宿っている制約を捉えるために、生物の概念を数理的に捉えてアプローチしていきたい」
「コンクリーションという生物の死骸と海水中の成分が反応することによってできる硬い石をテーマにして実験を行った」
「世界でもまだ根本的な治療薬が開発されていない認知症の薬を作りたい」
「人間社会の構造を広く学び、将来は社会の様々な立場の人の声を伝えられる新聞記者をめざし社会に還元できる人になりたい」
いずれも強い個性と好奇心の持ち主であることが分かるだろう。来年度で10年を迎えるが、東大が推薦入試の実施に踏み切った理由の背景にはピカイチの学業優秀者が集まる東大ならではの切実な事情がある。
大手予備校幹部がこう話す。