成果主義より年功序列を望む若手社員が増えている(写真:William Potter/Shutterstock.com)
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(川上 敬太郎:ワークスタイル研究家)

長期安定的なイメージが強い「年功序列」だが…

 いまの新入社員は、年功序列を望む――そんな調査結果が話題になりました。産業能率大学総合研究所が2025年度の新入社員を対象に、年功序列的か成果主義的かどちらの人事制度を望むか尋ねたところ、年功序列を望む声が56.3%に及んだとのことです。

 とはいえ、社会に出て間もない中で年功序列や成果主義のメリット・デメリットを把握するには限界があります。成果主義より年功序列が支持を集める背景には、言葉の雰囲気から連想される長期安定的なイメージや安心感があるのかもしれません。同調査によると、69.4%が終身雇用を望むとも回答しています。

 ただ、年功序列は“働かないおじさん”などと呼ばれる、働きぶりに見合わず高給を受け取るベテラン層が生まれるといった弊害も指摘されます。新入社員の多くが年功序列を望むとされる中、職場はこれからどのようなシステムを作っていけばよいのでしょうか。

 自分は会社に入ってうまくやっていけるのか、親元を離れて自力で生きていけるのか──。初めて社会に出た新入社員が、そんな不安を抱えるのは当たり前のことです。長期安定的なイメージにひもづく年功序列を求めても不思議ではありません。

 また、年次が上であるほど上位の先輩と見なす年功序列のシステムは、長年の学校生活で親しんできたカルチャーと似ています。先輩後輩の上下関係を軸にOJTで仕事を覚える手法は新入社員にとってなじみやすい面があり、右も左も分からない状態からの育成段階においては特に、一定の合理性がある有効な手法かもしれません。

 しかしながら、研修生のような立場から徐々に成長して一人前になっていくにつれて、これまでただ偉い存在でしかなかった先輩社員の振る舞いのアラが見えてくるものです。「あの人、後輩に仕事を押しつけてばかりで自分は何もしないな」とか、「この仕事、いい加減に取り組んだからこんなクレームが起きているのではないか」といった具合です。

 やがて仕事に自信がついてくると、先輩社員より高い成果を上げられるようになるかもしれません。ところが、給与は自分の方が少ない。さらにはインターネットを見たり新聞を読んだりして暇そうに見えるベテラン社員に、自分よりもはるかに高い給与が支払われていると知る。そうなれば「理不尽じゃないのか」などと疑問を抱きやすくなっていきます。