(川上 敬太郎:ワークスタイル研究家)
定年年齢を引き上げる会社は増えているが…
「まだまだ働ける」「仕事が好き」など、定年退職後も働く意欲を持ち続けているシニア層は少なくありません。そんな働くことに前向きなシニアを戦力化しようと、定年年齢を60歳から引き上げることを検討する会社が徐々に見られるようになってきました。
例えば、パナソニックのグループ企業は2025年から定年年齢を65歳に引き上げ、明治安田生命では70歳への引き上げが検討されていることなどが報じられています。しかし、それらの動きはまだ少数派です。さらに、定年制度そのものを廃止している会社となると、その数はもっと少なくなります。
一方、労働市場は人手不足が続いています。厚生労働省の一般職業紹介状況によると、求職者一人当たりの求人数を示す有効求人倍率は2013年11月以降、コロナ禍の落ち込みなど上下することはあっても1倍を下回ったことがありません。直近、2024年6月は1.23倍です。求人数が求職者数を上回っている状態が10年以上も続いていることになります。
少子化の影響を考えると今後も人手不足は続くと見込まれ、さらに厳しさが増していくことも十分考えられます。それなのに、なぜ多くの会社では定年制度を保持し、人材確保できる幅を狭めたままにし続けているのでしょうか。
高年齢者雇用安定法は定年年齢を60歳以上にすること、さらに会社に対して65歳までの雇用確保義務と70歳までの就業確保を努力義務として定めています。高齢になっても働き続けられるよう、少しずつ制度が改正されてきている状況です。しかしながら、一定の年齢で線を引き、制限していることには変わりありません。
厚生労働省の「高年齢者雇用状況等報告(令和5年)」によると、従業員21人以上の会社で定年制を廃止しているのは3.9%にとどまります。ほとんどの会社で、一定年齢に到達すると退職することになる制度が設けられています。
また、早期退職を募集している会社で多く見られるのも、45歳以上や50歳以上といった具合に一定の年齢以上が条件になっているケースです。さらに、部長職は55歳までなどと役職定年を設けている会社もあります。