(岡村進:人財育成コンサルタント・人財アジア代表取締役)
ビジネススクールを営む私は、若手から中堅まで幅広い層に研修を行っているが、彼らの話にかなりの頻度で登場するのが“できないおじさん”だ。
ネット記事を見ても、若手のおじさん世代に対する怒りやディスりが氾濫している。
きっと実害を被って我慢ならないストレスが溜まっているのだろう。
だが、そんなおじさんをディスっているあなた自身、“できないおじさん”にならないと断言できるだろうか。
“できないおじさん”が生まれたワケ
「手を動かさない」「新しいことを学ばない」「決められない」「文句ばかり言う」等々。若者の批判の舌鋒はどんどん鋭くなっている。しかし、おじさんたちはなぜこうもできないのだろうか。
もちろん、おじさんたちは初めからできなかったわけではない。
かつては世界から称賛された日本の経済成長、それを自分たちが支えているという自負があった。給与も毎年、着実に上がっていったので、誰もが「自分は評価されている」という自己肯定感を持つことができた。
なにしろ部長になったりすると、それなりの部屋が用意されたりしたので、「いずれ役員に」などと高望みはしなくても、出世にも夢が持てた。
希望にあふれ、昼間は仕事、夜はネットワーク作りに勤しむおじさんの若かりし頃の働き方は、形だけ見れば、私が後々グローバル企業で協働したエグゼクティブに近かった。
ところが、低成長時代に入ると部長になっても個室はなくなり、自由になる経費も大幅に減少。そもそも管理職ポスト自体も減ってしまった。
おじさんたちが夢見ていた偉くなる日は幻と消えた。ちょうどその年代になると、親の介護などプライベートな難問にもぶち当たる。こうして公私ともに気力をすり減らしていったのだ。「俺の人生もこんなもんか。まぁいいか」。そんなつぶやきが増えていった。