戦略的キャリア形成の思考法
会社に見切りをつける、その早さも気になって仕方がない。入社3年目はまだビジネス人生の幼少期、よちよち歩きを始めたばかりだ。
経験則上、業界スキルや人脈がどうにか整い、転職でステップアップできるようになるには最低でも6年、せめて10年が必要だ。3年程度でやめてしまったら、その企業でのキャリア自体がすべて無駄になってしまうから、もったいない!
少なくとも私は外資エグゼクティブとして採用面談するに際し、転職の多い人財には国籍を問わず強い警戒心を持った。2~3年の業務経験を熱く語られても、かなり割り引いて聞いたのが実情だ。
転職しようとする若者の多くが「友人もみんな辞めている」「組織がおかしいから」と口をそろえるが、それはあまり理由になっていない。なぜなら、社会も会社も人も、過去ずっと不完全であったし、おそらくこれからも不完全であり続けるからだ。少しでも完全を目指して自分が出来る貢献をするのが、組織で仕事をすることの意味なのだ。折角潜在能力やセンスが高いのに、仕事や業界の本質を理解せずして次の青い鳥を求めてしまった若手に高い市場価値を付けるのは難しい。
実際、知り合いのヘッドハンターも「転職の都度、組織と人財を知るのに3年かかる。この時間のロスを何度も繰り返すのは非効率だ」と警告する。
すでに終身雇用は崩れ始めているのに、日本では転職と向き合う姿勢はまったく定まっていない。私が外資や米国子会社の社長時代に、志願者に問うたのは「過去苦難を乗り越えて組織にいかなる成果をもたらしたか」「あなたはここで何を実現したいのか」だ。折角自己変革の意識の高い若手が、世の中の流れに身を任せてしまったら、目的なく漂流するできないおじさんと同じになってしまう。