ホンダと日産自動車が経営統合に向けて協議に入ることが報じられました。ここに至る経緯をより深く理解できるJBpressの記事をもう一度お届けします。2023年以降、ダイハツ工業の認証不正問題をきっかけに軽自動車業界で再編機運が高まりました。「軽」を切り口に、その先の電動化なども見据えた大規模な業界再編を予測した、ジャーナリスト・井上久男氏の記事を取り上げます。(初出:2024/01/1)※内容は掲載当時のものです。

ダイハツの不正が業界再編の引き金に?(写真:共同通信社)
  • ダイハツ工業の不正をきっかけに、軽自動車業界で再編機運が高まっている。ジャーナリストの井上久男氏が独断と偏見で再編シナリオを大胆に予測する。
  • ダイハツ親会社のトヨタ自動車はスズキに出資しており、トヨタを軸にスズキ・ダイハツ連合が誕生する可能性がある。
  • さらに、ホンダが開発コスト削減のため軽分野で日産自動車・三菱自動車連合に合流するかもしれない。軽でトヨタ系・非トヨタ系の2グループが形成されれば、将来はEVも見据えて軽以外にも提携関係が発展するという読み筋も成り立ちそうだ。(JBpress)

(井上久男:ジャーナリスト)

 認証試験の不正により国内の全工場が生産停止に追い込まれた軽自動車最大手のダイハツ工業。同社は現在、トヨタ自動車の100%子会社であり、カンパニー制を敷くトヨタの「新興国小型車カンパニー」内に位置付けられている。

 資金支援も含め、トヨタはダイハツを全面支援する考えを示しているが、実はこのダイハツの不正問題が業界再編の導火線に火をつける可能性があると筆者は見ている。

記者会見するダイハツ工業の奥平総一郎社長(左)とトヨタ自動車の中嶋裕樹副社長(写真:共同通信社)

 トヨタではトラックを製造する子会社の日野自動車で2022年に大規模な品質不正が発覚した後、日野を支援しながらも一気にダイムラートラック傘下の三菱ふそうトラック・バスと経営統合させる「荒業」を用いた。今回もトヨタや同グループ内では、「ダイハツも事態が落ち着けば日野同様に他社との提携をトヨタが進める可能性がある」との声が出始めている。

 トヨタ自身が親会社として今回のダイハツの不正を機に、組織の在り方を見直すことで、トヨタグループにおけるダイハツの位置付けが変わる可能性は出てくるだろう。その際にカギとなる存在がスズキだ。

トヨタ自動車の豊田章男会長(写真:共同通信社)

 トヨタとスズキは2019年に資本提携を発表し、スズキにはトヨタ資本が入っている。この提携は、独フォルクスワーゲン(VW)との提携破談後、スズキ側がトヨタに持ち掛けたとされる。この資本提携を機に、トヨタはスズキに初めて役員を送り込んだ。送り込まれたのは、トヨタのインドにおける製造・販売子会社である「トヨタ・キルロスカ・モーター」の社長を2016年まで務めてトヨタ本社に戻り、コーポレート戦略部長などを歴任した石井直己氏だ。

 石井氏は現在、スズキで副社長を務め、鈴木俊宏社長の右腕となっている。こうした人的関係強化を契機に、2022年からはトヨタ・キルロスカ・モーターでスズキが開発した小型SUVの生産を始めるなど協業関係を強化しており、、いずれ、トヨタの出資比率は高まると筆者は予測している。