(井元 康一郎:自動車ジャーナリスト)
ライバルメーカーも批判する日産の「見通しの甘さ」
日産自動車の業績がさえない。11月7日に発表した2024年度中間決算は売上高こそ5兆9842億円と前年同期比で800億円弱の減少にとどめたが、営業利益は9割以上減の329億円。7月に発表した第1四半期の営業利益も前年同期比99.2%減の9億9500万円だったが、その悪い流れを止められなかった。
業績悪化を受け、2024年度の通期予想も大幅に下方修正した。第1四半期の段階では下方修正するも通期で営業利益5000億円と、当初予想の1000億円減にとどめられるとしていたが、今回の再修正では1500億円に。この3カ月で日産が懸命に維持しようとしていたシナリオが完全に崩れた格好だ。
決算発表翌日の11月8日には株価が一時368.5円まで下落。終値は385.2円とやや戻したが、それでも年初来安値だ。時価総額は今やスバルやスズキにも抜かれ、完成車メーカーとしては6位に沈んでいる。
ライバルメーカーの幹部は日産の見通しの甘さをこう批判する。
「中間決算を見るかぎり、最初の下方修正は目算あってのことだったとはとても思えない。3カ月の間に何らかの外的プラス要因が起こることを期待していたとしたら、あまりに甘かったとしか言いようがない。業績悪化はあくまで一時的なもので経営方針は間違っていないと印象づけたかったのだろうが、運任せの予想が大ハズレとなった時にどれだけ信用を失うか考えなかったのだろうか」
日産の不振でよく報じられるのは中国での販売急減だが、売り上げは減ってはいるもののアジアセクターの営業利益の減少幅は約60億円と、大勢に影響のないレベルだ。深刻な状況に陥っているのは稼ぎ頭のアメリカ市場である。
売上高は前年並みだったが、営業利益は前年同期の2413億円からマイナス41億円へと一気に赤字に転落。日産の営業利益の規模感からみて半期で2400億円以上の利益が吹き飛ぶというのは他の地域の頑張りでカバーできる範囲を完全に逸脱している。
なぜ日産はこのような危機的状況に陥ってしまったのか──。