(写真:Images Products/Shutterstock)

(柳原 三佳・ノンフィクション作家)

「ながら運転」による死亡事故や重傷事故が相次いでいます。

 昨年の夏、軽乗用車がセンターラインをオーバーして路線バスに衝突し、後部座席に乗っていた5歳と7歳の姉妹が死亡した痛ましい出来事……。事故発生から7カ月たった3月11日、福岡地検は運転していた母親を「過失運転致死傷」の罪で起訴しました。報道によると、母親は「カーナビの画面を確認していて、前をよく見ていなかった」と供述しているそうです。

 カーナビを搭載している人なら、運転中、画面のMAPにちらりと目をやることはあるでしょう。しかし、画面を「注視」することは道路交通法違反であり、重大事故につながる危険な行為です。

時速60キロ走行ならスマホ画面を2秒見るだけで33メートル進行

 警察庁のサイト〈やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用〉には、こう書かれています。

『運転者が画像を見ることにより危険を感じる時間は運転環境により異なりますが、各種の研究報告によれば、2秒以上見ると運転者が危険を感じるという点では一致しています』

 2秒と聞くと一瞬のようにも思えますが、時速60キロで走行している場合、車は約33.3メートル進みます。

 一瞬の不注意で、2人の愛娘の命を奪ってしまった母親の気持ちを思うと言葉がありませんが、ながら運転の恐ろしさとドライバーの責任の重さを、あらためて突き付けられた事案でした。

 福岡地検がこの母親を起訴した3月11日、滋賀県野洲市の市道交差点には、「わき見事故多発」と書かれたのぼりが掲げられ、警察官や小学校教員らによって、『ながら運転厳禁』を呼びかける安全啓発活動が行われていました。この日は雨でしたが、交差点周辺には白バイ隊員も駆けつけ、道行くドライバーに安全運転を呼びかけていました。

野洲市の「ながらスマホ」による交通事故現場近くで注意を呼び掛ける警察官(事故被害者となった航平くんの家族提供)

 実はちょうど1年前の2024年3月11日、この交差点で、「ながらスマホ」のダンプによる赤信号無視の重大事故が発生しました。

事故現場に立つ被害者児童・航平くんのお母さん(筆者撮影)