
生涯でうつ病を経験する人は、およそ15人に1人と言われている。うつ病は、治療の長期化や再燃・再発が多い。いかに早く治療し、再発を防止するかがうつ病治療のカギだ。
現在、新しいうつ病治療法として注目されているrTMSやECTは、どのような治療で、従来の抗うつ剤による治療とどう違うのか。鬼頭伸輔氏(東京慈恵会医科大学精神医学講座主任教授)に話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)
──従来の抗うつ剤によるうつ病治療には、どのような課題があるのでしょうか。
鬼頭伸輔氏(以下、鬼頭):うつ病患者に初回治療として抗うつ剤を処方した場合、その抗うつ剤が効く割合は約37%です。
1剤目で効果がなかった患者に対し、2剤目の抗うつ剤で治療を続けると、おおよそ19%の患者は寛解(※)します。3剤目、4剤目になると、その効果が出るのは5~6%程度の患者に留まります。
つまり、抗うつ剤での治療で良好な経過を辿る患者は、60%程度だということです。2剤目が効かなければ、3剤目以降の効果はあまり期待できません。
※病気の症状が緩和し、安定した状態にあること。

抗うつ剤が効かない患者に対する治療法があまり確立されていないという点が現状の課題です。
また、うつ病は再燃・再発が非常に多い病気です。それをいかに予防していくのかということも、重要だと感じています。
──昨今では、抗うつ剤以外のうつ病治療としてrTMSやECTという治療法を耳にするようになりました。